稽古はすぐに始まった。
でも、舞台が決まったことはまだ中でのことで、どうなるかはまだ分からない。
舞台ができるかどうかも、それは上の人の判断。
やからまだ、舞台のことは両親にも誰にも伝えられないまま。
今回は特に、体力のない僕と、しげと、神ちゃん、耳が聞こえにくい照史君がいるのと、演技経験者が少ないのもあって、稽古の時間はかなりとられていた。
台本もらって何度も読んで、内容は一応理解してるんやけど、自分のセリフがどこで入るのか、どう言えばいいのかはよく分からないまま稽古に臨んだ僕は、
演技というものの厳しさを痛感した。
怒られてばっかりで、何度も何度も同じシーンを繰り返す。
僕が止めてしまって先へ進めず、次のシーンを待ってる人にも申し訳なくて、
でも焦れば焦るほど、空回りして、失敗して、
結局怒鳴られて。
そう言われて次のシーンになってしまって、僕はその場からどかされた。
稽古1日目がこれ。
泣きそうになって、慌ててレッスン室を出た。
レッスン室の外で、台本両手に持って、体育座り。
我慢してた涙が、頬を伝った。
俺って、
弱いな。
こうなることだって、ちゃんと予想はしてたはずやのに。
こんなことでくじけそうになって。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。