正式に決まったのと同時に、演技指導の先生の熱も、さらに加わった。
ちょっとでもできていなければ容赦なく叱られて、出来るまで何度もやり直し。
連日の稽古続きで疲れてた僕は、今日は朝から微熱。
それもあっていろんなシーンでミスを繰り返してしまった。
同じシーンで何度もやり直しした後、先生に怒鳴られた。
一生懸命練習してきた分、かなり応えた。
僕は、
病気やって、甘えてたんかな。
いつもならこんなことどうってことないけど、しんどいのもあって、気付いたら頬に涙が伝ってて、慌ててぬぐった。
そう言われて思いっきり背中を押されて、レッスン室を出ていくように言われて、
どうしようもなくて外に出ようとした時、
そんな声がした。
振り向くと、照史君が立ち上がってて、つながるように濱ちゃんと淳太君も立ち上がった。
神ちゃんが勢いよく言うのを、流星が止めていた。
淳太君はそう言うと、「口答えしてすみません」と頭を下げた。
止まらなかった涙は、さっきよりも溢れて、
でも、この涙は辛い涙じゃなかった。
先生は僕がさっきより泣いているのを見て、表情を変えてそう言った。
休憩と言われてざわつく部屋で、
6人が僕の所に駆け寄ってきた。
ぎゅっと抱きしめてくれる淳太君。
涙が止められなくなった僕の頭を撫でたり背中をさすったり、
何度も、
「大丈夫やで」
って言ってくれる。
そういえば、
7WESTのセンターを任された時も、同じだった。
お前は1人やない、
俺らがおる。
そう教えてくれた。
もっと、仲間を信じなきゃ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!