稽古が始まってからしげとの帰り道はほとんど演技の話になった。
大体はできてないと思う所をお互いが言い合う。
やけど、出来てないことをズバッと言われたからって、ムッとはせえへん。
しげは俺の演技をほんまによく見てくれてて、アドバイスはいつも的確。
自分では気付かないところも言ってくれるからほんまに助かるねん。
急にシゲがそう言った。
結構前の話やからそう聞くと、
しげが嬉しそうに僕を見て笑う。
そんな前からしげは僕のこと知っててくれてたんやな、
って、
すごく嬉しかった。
しげは僕が言うアドバイスをちゃんと「そうやなぁ」って受け入れてくれて、最後にはいつも「ありがとう、神ちゃん」ってお礼を言う。
こういう所、ほんますごいなっていつも思ってる。
俺には、なかなかできひん事やから。
今までしげのようにお互いあかんことも、いいところも言いあえるような友達はできたことなくて、
ほんまにしげは特別やなぁって、隣を歩きながら思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。