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小さく首を横に振って 、私の表情をじっと見つめるすにょんくん 。
さっきの笑顔とは打って変わって真剣な表情をしているから固まってしまった 。
私の肩に乗せられたすにょんくんの左手は大きくて
それだけでも心拍数が上がってしまう 。
そのことに 、すにょんくんは気付いているのか気付いていないのか 、私を見て目を細めた 。
肩に乗せられた手のひらに力が入る 。
告白 、されたの 。
そう言おうとしたのに 、言葉に詰まってしまった 。
彼が急に距離を縮めてきて 、唇が重なるまであと少し 。感じたのことなかった 、すにょんくんの吐息に息が詰まる 。
話を聞いているのか 、聞いていないのか 、
わからない相槌をされて視線を彷徨わせる 。
彼が私の背後にあるコンロのスイッチを 、右腕を伸ばして止めた 。
どうやらすにょんくん 、作り途中のキムチチャーハンが焦げることは防ぎたいらしい 。
そのまま 、優しく私の腰にそえられた右手が 、私の逃げ道を無くしていく 。
そんなこと言われたって 。
こんな状態で何を言えっていうの 。
真顔だった彼も 、口角が上がってることに気づいた 。
その表情を見た途端 、口から自然と言葉が溢れていた 。
彼の細められていた目が一気に見開かれて 、ずっと合わせてくれていた視線がさ迷っている 。
この言葉を口にした途端 、時間がまた進み出したみたいに 、部屋の灯りやキムチチャーハンの香り 、ずっと続いていた沈黙を感じることが出来て 。
周りのことを何も感じなくなるぐらい緊張していたんだ 、と気付かされた 。
… けれど 、目の前の人はまだ時間が止まっているみたい 。
案の定 、応答無し 。
取り敢えず 、今まで悩んでいたこと 、彼に聞かないと 。
そう思ってまた口を開いた 。
ふに 、と触れた唇の感触に 、
また固まってしまう 。
え 、待って 、今
え 。
後で聞くから 、と言ってまた重ねられた唇 。
さっきまで肩に乗せられていた手のひらが
背中に回される 。
よくない !! よくないんだって !!
ちょ 、ちょっと待ってよ 、すにょんくん 。
そう言おうと何度も試みるのに彼は止まってくれない 。
慌てて彼の頬を両手で掴むと 、
不満そうにこっちを見てきた 。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!