第3話

ほっとけない。
3,222
2022/02/27 15:52
*


ある日の放課後。



部活がある奴らは部活をしており、




俺は1人散歩がてらに校舎内をぶらつく





そんな時、鈍い音と、呻き声。




それと共に聞き覚えのある、大きな笑い声がした




明らかにこれは“喧嘩”ではない、




ということを俺は悟った




またいじめか、と俺はため息混じりに呆れた



目黒蓮
や、やめて……!



どこかで聞いた、その悲痛な叫び。





それを聞くなりなんなり、




考えるよりも先に身体が動いていた




俺が飛び出して行った先に居たのは




カッターだろうか、刃物を持った奴が1人と




一緒になっていじめてるであろう周りの奴ら4人ほど




身を守るように体育座りし、腕で顔を覆うようにして




小さく身を丸めているのが多分メグ。





メグが新しい青いスリッパを履いてるのと対照に




奴らは薄汚れた緑のスリッパを履いていた



…3年か、




相手が上級生であろうと関係ない




どうせ、1個しか違わねぇし




奴はなにかごちゃごちゃ言ってるが




問答無用で俺は刃物を持った奴を思いっきり殴った



上級生
っ…!

バキ…と鈍い音と共にドサリと奴は倒れる

上級生
やべぇ、こいつ─────


仲間が倒れて周りの奴らは青ざめ、焦り出す

岩本照
あ“あ”?
上級生
ひっ…
上級生
行くぞ、お前ら!
上級生
おう……!

奴らは倒れた奴を担いで逃げてった




やっと行ったか、



俺は振り返り、後ろにいるメグの方に視線をやる

目黒蓮
あの…

おずおず話しかけてくるメグ。



良かった、今日はそんなに目立った傷は無さそう。




引っ張られたのか知らないけど



ネクタイは緩んでるけど

岩本照
ん?
目黒蓮
あ、ありがとう…ございます……

ぺこり、と頭を下げてから



メグは乱れた制服を整えながら校舎の方に歩き出す




そのメグの歩き方に、俺は違和感を覚えた

岩本照
うん、つかお前は大丈夫なの
目黒蓮
っ…!大丈夫、です


うそだ。



だって右足びっこ引いてんじゃん




俺は嫌がるメグをひょいと持ち上げた


目黒蓮
ひゃ、!
岩本照
保健室まで我慢な


そう言って姫抱きのまま保健室へ直行した



つーかこいつ軽いな、ちゃんと食ってんのかな?




*




保健室について、扉を開ける



幸い人は誰もいなかった



俺は近くのベッドにメグを下ろす

目黒蓮
すみません……
岩本照
いーんだよ、

そう言って前髪をかきあげつつ頭を撫でてやれば



つぶらな瞳でこちらを見つめてくる



なに、小動物みたい?超可愛いんだけど

岩本照
つーか名前聞いてなかったな…


そうそう、1番大切なとこ。



前聞くの忘れてたからなぁ…

目黒蓮
め、目黒…蓮……1年です、
岩本照
目黒か、俺は岩本照。2年。よろしくな
目黒蓮
…ハイ


こくん、と目黒が頷く




あ、そう言えば怪我してるんだった



早く手当してあげないと

岩本照
右足、見して。

どういうこと?



とでも聞くかのように目黒は首を傾ける




……ん?これは気づいてない感じか?




それから目黒はゆっくりと右足の靴下を脱いだ

岩本照
…腫れてるな
目黒蓮
え……?


少し赤くなっていて、腫れている



くるぶしの所が少しだけ。



これは軽い捻挫だな、



そこまで重症じゃなくて良かった


岩本照
足、ちょっと高くするぞ。そこ寝転んで

そう言ってベッドを指さす



目黒は言われたままにころんと寝転がった




俺は隣のベッドから布団を借りて



積み上げて台を作りその上に目黒の右足を乗せた



氷と水の入った氷嚢を乗せてやると



一瞬きゅっと目をつぶった



その仕草が可愛くて照れ隠しと言っちゃあれかもしれないが



俺はテーピングを取りに行くと称してその場から離れた


目黒蓮
いわもとくんいかないで……



そう言ったように聞こえたのは俺の空耳だろうか




しかしその後付け足すように



ここにいて。



そう、か細い声で目黒は言った

岩本照
大丈夫、俺はここにいる


テーピングなんかその場において




俺は目黒のそばに飛んで行った




手を握ってやるとへへ、と目黒はふわりと笑って




安心したように眠った

岩本照
さすがに疲れたよな…。



俺は丸椅子に座ってぼーっと目黒の寝顔を見つめる




ほんと、綺麗な顔してやがるな…





まつげなっが、、





そりゃ嫉妬もされるわけだ…





すやすやと眠る目黒を見ていると俺まで眠たくなってきて





俺は目黒と手を繋いだままベッドに突っ伏した

*

深澤辰哉
あ、照こんなとこにいた


突然、ふっかの声がして目が覚める





お前、マジで何してんだよ…と





ふっかが俺の手元をちらりと見るから





慌てて目黒と繋いでいた手を離した

岩本照
べ、別になんもしてねぇし
深澤辰哉
ほんとに?
岩本照
うん、怪我してたからここ連れてきただけ
深澤辰哉
彼女?(笑)
岩本照
ちげぇよ、男だしこいつ


ニヤニヤしながらふっかは聞いてくる




別に何もないんだって、ただ助けただけ

目黒蓮
いわもとくん…?


後ろから声がして、びっくりして振り返ると




目黒が眠そうな目を擦りながら起き上がってきた





は、可愛すぎるだろ


深澤辰哉
オンナじゃねーのか……え、可愛い


ちぇっ、とほざいていたふっかまでもがそう言い出す

深澤辰哉
照、かわいーじゃんその子


ふっかは近づいてきて、




きみ名前は?やら何年生?やら質問攻めにしてる





そろそろやめとけよ、と釘を刺そうと思った時





目黒が俺のカッターシャツの裾をきゅっと掴んだ




シャツを掴んだ目黒の右手は小刻みに震えている


岩本照
ふっか、ストップ。怖がってる
深澤辰哉
ありゃ、怖がらせちゃった?ごめんな、


質問が尽きないふっかにストップをかけてから




俺は目黒に向き合う


岩本照
ごめんな、怖がらせて。こいつ悪いやつじゃないんだ、俺の仲間。


少し涙目になりつつもこくんと目黒は頷く

深澤辰哉
俺、深澤辰哉。3年なんだけど気軽にふっかって呼んで?
目黒蓮
……ふっか、さん
深澤辰哉
うん(笑)どした?
目黒蓮
おれ、目黒蓮っていいます、
深澤辰哉
目黒くんかー、いい名前!
長いからさ、めめって呼んでいい?
岩本照
どっからそれが来るんだよ(笑)
深澤辰哉
え、“め”ぐろだから?


我ながらナイスネーミングセンスなんて呟いている




そんなふっかを横目にさっきから静かな目黒に視線を移す




…え。



目黒はぽろぽろと涙を零していた




なんで泣いてんの、


岩本照
目黒…?
深澤辰哉
え!わわ、どしたの!?
岩本照
ふっか……


目黒の涙を見て慌てだすふっか



俺はふっかを哀れみの目で見つめた

深澤辰哉
ごめん、俺、なんか悪いことした?
目黒蓮
…ちがくて、…ヒック
深澤辰哉
…え。
目黒蓮
嬉しかったんです、こうやってあだ名で呼んでくれる人久しぶりだから……


嬉しいです




もう一度目黒はそう言うとふにゃりと笑った


深澤辰哉
あーもう可愛いやつだなぁ!

ふっかは目黒に抱きつき、ぐりぐりと頭を撫でる




こいつヤンキーだよな?




喧嘩の時あんだけガラ悪くなんのに




超デレデレだぞあいつ。





目黒が嬉しそうだから放っておこうと思ったが





2人をみていると胸のどこかがモヤモヤしてきて。


岩本照
ふっか、もういいだろ…


そう言って俺はふっかを引き剥がした

深澤辰哉
そうだ、照。めめ基地連れてっていい?

突然のふっかの提案に俺は驚く




基地、というのは俺たちヤンキーグルである





“スノグループ”





の溜まり場であり本拠地である






そこまで俺は考えてなかったからな…




目黒をそこに連れてって彼に迷惑かけないだろうか




第一、俺らがヤンキーってことを



目黒に伝えてねぇしな…
目黒蓮
基地…?なんですかそれ、
岩本照
まだ目黒に言ってなかったな
目黒蓮
……?
岩本照
俺ら、ヤンキーなんだ


驚かれて逃げられるかと思ったがそうでもなくて



目黒は何食わぬ顔でふーん、と頷いた

目黒蓮
いわもとくん……?
岩本照
お前、驚かねぇの
目黒蓮
……だって薄々気づいてましたから。

体育館裏なんてそうそう人来ないんですよ



だからそこに来るってことはそれ関係の人かなーって。



そう目黒は淡々と言った




おぉ……。俺の方が驚いたわ(笑)

深澤辰哉
すごいなめめ…
目黒蓮
そんなことないですよ
岩本照
んで、俺らスノグループって言うとこに所属してんだけど
目黒蓮
あ、聞いたことあります
深澤辰哉
まじ?んで、基地はそのスノグループの溜まり場だよ
目黒蓮
そうなんですね
岩本照
まぁ簡単に言えばそういうこと。ちょ、ふっかこっち来て?目黒ちょっと待っててな


一通り目黒に説明し終わった後、



俺はふっかを捕まえて目黒から少し離れた

深澤辰哉
なんだよ、
岩本照
まじで連れてく気か
深澤辰哉
いーじゃん?ほっとけねぇし
岩本照
そうだけどさ…
深澤辰哉
そのまま放っておいてまた傷つけられたらどうすんの?
岩本照
……確かにな、


やっぱ連れていく方が安全だって



ふっかはそう言った




…じゃあ目黒に聞いて、いいって言ったらな



それを条件に俺は賛同した


深澤辰哉
めめ〜、俺らの基地来る?
目黒蓮
…!行ってみたい、です


そんなこんなで目黒が来ることが決まった

深澤辰哉
おっけ〜じゃあ行こっか
目黒蓮
…今からですか、?
深澤辰哉
そのつもりだけど
岩本照
俺がおぶってくから背中のって
目黒蓮
…はい。


こんなすんなり決まっていいのだろうか



だけど、ふっかの言う通り



このまま放っておいて傷つけられるのは嫌だ




色んな感情が俺の中でせめぎあい、悶々としていた




*



旧校舎の、4階の1番端っこの教室。





新しい校舎ができてからここはもう使ってないから





俺らみたいな奴らが集う穴場になっている





ここ、1番景色がいいんだよな




俺らのお気に入りの場所。


深澤辰哉
めめ、ここだよ


ふっかはそう言ってドアを開ける




するともう既に阿部と舘さん、佐久間がいた

佐久間大介
照、ふっか、おーっす!!
深澤辰哉
早いなお前ら!わら
阿部亮平
あ、照にふっか。……と誰?
岩本照
あーこいつは目黒。


目黒は俺の背中から降りて




礼儀良くぺこりと頭を下げる

目黒蓮
……目黒蓮、です


…彼は人見知りなのだろうか。




目黒は長いまつげを伏せるようにして




視線を下に移した

深澤辰哉
かわいーだろ?俺はめめって呼んでる!
佐久間大介
俺は佐久間!よろしくめめ!!
阿部亮平
俺は阿部な、めめよろしく。
目黒蓮
…こちらこそ、
深澤辰哉
そうだあべちゃん、めめ怪我してるから見てあげて?
阿部亮平
もちろん!めめ、ちょっと見せてみ?


あ、テーピング巻こうと思って忘れてたんだった




まぁいっか



実際阿部のほうが上手いし…





おいで、と手招きする阿部。





目黒はしばらく俺の後ろで戸惑ってたから





大丈夫だよ、行っといで?と声をかけてやる




すると目黒は安心したようにこくんと頷いて




阿部の方へ右足をひょこひょこかばいながら




ゆっくり歩いてった




岩本照
そう言えば翔太たちは?
宮舘涼太
あー、屋上にいる。もうそろそろ帰ってくるんじゃないかな?


ふーん、と相槌を打っていると




ガラリとドアの開く音がした

向井康二
やっぱ屋上最高やわ!
ラウール
ねぇそれおっさんみたい(笑)
渡辺翔太
……ねむい
宮舘涼太
翔太また寝てたのか?
渡辺翔太
あったかくて寝ちゃった
佐久間大介
翔太猫かよ!(笑)


佐久間が言うのに笑いがおこる



張本人の翔太は欠伸をしながら



目黒の方を見て言った

渡辺翔太
てかそこの子誰?
岩本照
あ、そうそう。紹介するな、


そう言って翔太や康二、ラウールの方を向くと




康二が目を見開いて一点を見つめていた。




視線の先は、もちろん目黒で。




ゆっくりと口を開き、震える声で康二は言った





向井康二
─────蓮?