第7話

もう1つの恋
1,978
2022/07/18 01:19


あの日から、どれだけだっただろうか。



蓮が“基地”に現れることは1度もなかった



休み時間ごとに基地に行って



少し待ってみては教室に帰るの繰り返し。



昼休みはみんなで集って昼飯を食べ、待っていた


岩本照
はぁ……。


思わずため息が零れてしまう



蓮と同じ学年の康二でさえ行方は知らなくて



俺は知らんよ、の 一点張りだった



こんなにもスノグループでない“誰か”を



心配したのはいつぶりだろうか。



そんな俺を見かねたのか、



ふっかが横に来て話しかけてきた

深澤辰哉
うかない顔だな
岩本照
んな事ねぇ…
深澤辰哉
うそつけ、最近ずっと元気ない
岩本照
……そう見えるか


ふっかは少し考えた後、心配なの?なんて聞いてくる



誰が、なんて聞かずとも俺は理解した



蓮のことだろ、心配してるに決まってるじゃん



“また明日”



そう言って約束した相手が来ないんだから



心配して、当然。



俺は自分にそう言い聞かせた


深澤辰哉
ひかる…それは“恋”ってやつだな
岩本照
は?
深澤辰哉
なにそれ、変な声w


思わず声が裏返り、自分でも驚くほど変な声が出た



恋って……



あれだよな…?



胸がどきどきする、いわゆる青春ってやつ。



こんな風貌だからそんな経験なんかなかったけど



なんだろ、こんなの初めてなんだよなぁ

深澤辰哉
そう、ドキがムネムネするやつ♡
岩本照
逆だろw


そう言って茶化してくるふっか。



ドキがムネムネってなんだよ笑



思い切り逆じゃねーか



深澤辰哉
まぁそういうこともあるんじゃない?
実際さ、舘さんと翔太もそうじゃん
岩本照
ゆり?あれは例外w
深澤辰哉
たしかにw
ずっと一緒だったしね


なんか、お互いのこと“空気だ”って言ってたっけ?



ふっかはケラケラ笑いながら言った


深澤辰哉
そうだ、ひかるに話がある
岩本照
なに?


先程のようなふざけた様子とは打って代わり、



いつになく真剣な表情なふっか。



どうした?なんて聞けば神妙にふっかは口を開く

深澤辰哉
俺さ、
深澤辰哉
ひかるのこと、好きだったよ


突然告白され、どうすればいいか分からず固まってしまう



だけど、妙に引っかかるのが



好き“だった”よ。



岩本照
え……あ、
深澤辰哉
返事しなくていいから。
俺が勝手に言いたかっただけ
岩本照
ふっか、
深澤辰哉
いーのいーの、忘れて?


そうか、“恋”だったんだな



目が合ったら嬉しくて、一緒にいると楽しくて。



表情や仕草とか全部愛おしく感じるのも、



ほかの誰かと喋ってんのに嫉妬するのも。



ぜんぶ、その感情のせいだったのか。

深澤辰哉
行かなくていいの


少し震えた声でふっかは言った

岩本照
ふっかは、
深澤辰哉
俺はいいから


はやく、めめの所に行ってあげて。



今にも泣きそうなふっかを置いていくことが出来ずに



その場でオドオドしてると


深澤辰哉
早く行け!


そうふっかは声を荒らげた



いつも温厚なふっかには珍しいことで



一瞬何が起こったのか理解出来ずにいた

岩本照
ごめん、ふっか


俺はふっかをおいて教室を飛び出した



*





深澤辰哉
これで、これでよかったんだ……


照が教室を飛び出して行って



静かな部屋に1人。



緊張の糸が切れて、俺はその場に座り込んだ



ちょっと怒鳴りすぎたかな、ごめん照……



俺、基本怒らないからびっくりしただろうな



めっちゃびくってなってたけど(笑)


深澤辰哉
はぁ……。


ほんとはここにいて欲しかった



でも、“行かないで” なんて言えなかった。




照が好きだった、




と過去形で気持ちを伝えるので精一杯だった



今も好きだなんて口が裂けても言えないでしょ?



だって 照 は めめ に“恋”してるから



めめのこと好きってバレバレなんだよ、あいつ。



決して分かりやすいわけじゃないけど



シンメで夫婦と呼ばれるほどいつも一緒にいれば



分かっちゃうもんなんだよね



んで、たぶん めめ も照のこと気になってると思う



確信ついたわけじゃないけど、なんか雰囲気?



でも絶対気になってはいると思うんだよね



単純にそんな2人の恋を応援したいんだけど



今は素直に応援できない自分がいる



いつかそんな日が来るといいなぁ……



なんてつくづく思う


深澤辰哉
あーあ。俺のは叶わない恋ってコトか、



もう、吹っ切れたら楽になれるかな?



照への恋心は忘れるって、決めたから




しんとした旧校舎の教室で



ぼそりと呟いた寂しそうな深澤の声は



誰も聞いているはずもなかった