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第1話

ヤンキーくん。
3,826
2022/02/24 06:31


ドサッ……




あれは、俺が1年の秋だっけか。





ある日の昼休み、仲間と共に屋上へ向かう俺の肩に




ぶつかってきた男子生徒


岩本照
……は?


ぶつかった反動でか、彼は倒れ込む。




思わず俺はそいつを睨みつけた


目黒蓮
す、すみません……!


すぐに立ち上がり、深々と頭を下げる




そいつ。



制服からして─────


渡辺翔太
こいつ、中等部だな?


翔太が口をはさむ




言わなくてもそれくらい見りゃ分かる。




流石の俺も無抵抗な後輩を殴るなんて悪シュミ持ってないぞ


岩本照
……おう。


翔太を無視して俺はそう言うと、





その男子生徒はもう一度頭を下げて走ってった





長い前髪に、顔全体を覆うかのような大きなマスク。



頭を下げて顔を上げた瞬間、



長い前髪の隙間から目が合った気がした




それがあまりにも印象的で。





俺はその場でぼーっとそいつの後ろ姿を見つめた


深澤辰哉
なに?照、あいつのこと気になるの


ニヤニヤしながらフッカは聞いてくる




そんなフッカを横目に俺は屋上のドアを開けた

岩本照
別に。
佐久間大介
え、絶対うそじゃん!(笑)
向井康二
それな!顔に“気になります”って書いとるで!
岩本照
書いてない
阿部亮平
めっちゃ否定するじゃん(笑)
ラウール
だってめっちゃ見てたじゃん?あの子の事
宮舘涼太
ほら、最年少にも言われてるぞ
岩本照
だからちげぇって。早く作戦会議すんぞ
佐久間大介
はぁい




俺たちスノグループは誰もいない屋上で昼飯を広げ







今日の放課後の喧嘩の作戦会議。



深澤辰哉
はい!じゃあ会議始めるよー、阿部ちゃんよろしく


頭が良く計算高い阿部がこの場を仕切る





いつも阿部の指示でみんなが動くのだ


阿部亮平
了解〜。今日はね─────



──────────────


*


あれから丁度半年前だっけか。





今が進級したばかりの4月だから多分そうだ






あの日をきっかけに、



なぜかあいつが気になるようになった





たった一瞬だけだ。




だけど、絶対目が合ったんだ




この目で見たんだぞ?






長い前髪の隙間から見えた瞳



透き通るように綺麗で、



涙が溜まっていたからか、どこか宝石のようで。




*


ラウール
中等部3年の子じゃない?ほら、だってネクタイ青色だったでしょ
岩本照
いっこ下か
ラウール
多分“メグ”って子だと思う
岩本照
メグ……?なにそれ、名前?
ラウール
ううん、わかんない……情報が少なすぎて集めようにも集められない、ごめんね
岩本照
ありがとう、まぁ……別にどっちでも良かったし俺は


そんなことを言いつつあんまりにも気になった俺は




中等部のラウに相談(康二には断られた)し、




情報を集めてもらったが




これと言って有力な情報は見つからずで。





“そいつ”は3年らしいから、ラウの1個上




学年違うから探すの難しいだろうなぁ……



ラウール
やっぱ気になるんだ?
岩本照
んな訳ねぇだろ、あんな陰キャ……
ラウール
はいはい(笑)また探しとくよ
岩本照
うん……ってもういいって!
ラウール
素直(笑)
岩本照
はぁ!?


あーなんで俺ってこんな素直になれないんだろ




*



そんなある日。




パックジュースを飲みながら校内を散歩していると




体育館裏からなんだか楽しそうな声が聞こえてきた


ヤンキー
わはは、やっちまえ!


初めはただの喧嘩だと思ってた





なんなら参加してやろうと近づいて行ってみると。


ヤンキー
殴るなら見えないところな!
ヤンキー
アザがセンコーに見つかるのはだるい(笑)



は?なにこれ、喧嘩じゃない……?




もしかしていじめ?




やばくないか、普通に。




何も無抵抗の人間を殴るなんてそいつの気が知れん





出ていこうか、躊躇していた時



奴らが俺が出ていくきっかけを作ってくれた

ヤンキー
え、やばくねこいつ(笑)
ヤンキー
なんも抵抗してねぇの!
ヤンキー
メグきゅーん、もっと遊ぼうね♡


は?




いまなんつった??


岩本照
お前ら何してやがるんだ!?


俺が出ていくと、奴らはバットを振りかぶった体制で



今にも振り下ろしそうだった




無理やりバットを奪い、それを奴らに向ける

岩本照
喧嘩すんのはいいけど無抵抗の奴をやるのはちげぇだろ?


ヤンキー
うわっ、岩本だ
ヤンキー
お前ら、逃げるぞ


そう言って奴らは走り去ってった




俺とやり合ったって到底勝てねぇから




逃げやがったな?





強い奴に喧嘩を挑めないから弱いものいじめする。




そんな臆病な奴らは初めっから負け組なんだよ


岩本照
大丈夫か


俺が振り返ってそう問いかければ




そいつはびくりと肩を揺らして後ずさりする

岩本照
なんもしねぇって。ほら、バット置いたぞ。


俺は奴らが持っていた金属バットをその辺に捨てて




しゃがみこむと、そいつの方に視線をやる



目黒蓮
っ……!


……ん?こいつ、、、




なんか見た事あるって思ったら……


岩本照
お前、あの時の……!


丁度半年前。



肩にぶつかってきた男子生徒だった

目黒蓮
……!??
岩本照
あ、そっか……覚えてねぇよな、


すみません……




そいつは耳をすまさないと聞こえない位の




か細い声でそう言うと




ぽろぽろと涙を零しはじめた





あーあー、泣かなくていいのに……




長い前髪、顔全体を覆うかのような大きなマスク。





以前と全く変わらない。


岩本照
全然、いい。つか覚えてねぇのが普通


だから泣くな、俺はそいつを落ち着かせるように




そう言って長い前髪をあげ、




傷がないか確認するためにマスクをずらしてやった


目黒蓮
!?



たしかこいつは“メグ”と言ったっけか。


岩本照
おぉ、イケメン……


男の俺が言うのもなんだけど





思った以上に彫刻のような、整った顔立ち。




イケメンだし綺麗





二重まぶたのぱっちりな目に、通った鼻筋




なんで隠しちゃうんだろう?





もっと自信持てばいいのに


目黒蓮
……おれ、ブサイクなんです、
岩本照
お前でブサイクなら世の中の男みんなブサイクだろ
目黒蓮
……そんなこと、ないです……。
岩本照
お前さーもっと自信持てよ?自分が思ってるより綺麗だぞ
目黒蓮
………。


メグは黙り込んでしまった




視線をそらされてしまった為目が合わない


岩本照
てか怪我してる。顔─────


ここ、と顔に手を伸ばした時




メグの肩がまたびくりと動き、咄嗟に頭を腕で庇う


目黒蓮
ひっ……!
岩本照
あ……ごめ、
目黒蓮
すみません………!あの…おれ、授業あるのでもう行きます、


あ……行っちまった、





メグは前髪を下ろし、マスクを鼻まで上げて




パタパタと走ってった




怖がらせるつもりは微塵もなかったんだけどな…




ていうか名前聞くの忘れてたわ




次会った時はちゃんと聞こう





じゃーちょっくらメグをいじめてたアイツら締めてくるか


岩本照
あ、翔太に舘。それとフッカ!
渡辺翔太
なに?
宮舘涼太
何か用か
深澤辰哉
ついでみたいに言うな!!
岩本照
ちょっと付き合って欲しいんだけど時間ある?
深澤辰哉
余裕!
宮舘涼太
翔太、次なんだっけ
渡辺翔太
あー……古典じゃね
宮舘涼太
じゃあ時間ある
渡辺翔太
俺も
岩本照
じゃあってなんだよ
渡辺翔太
古典なんか出ても寝るだけだし
宮舘涼太
俺は日本史と体育しか出ない
深澤辰哉
問題児か
岩本照
ヤンキーだろ
渡辺翔太
その通りだな(笑)


まぁちょっと着いてきて欲しい





そう言って俺たちは昼休み終了を告げるチャイムをシカトして





メグをいじめてたヤツらの本拠地である






旧校舎の空き教室へ向かった