第3話

狙われる側
240
2021/11/02 12:46
『志麻』と名乗った青年は、未だに肩を掴み続けるセンラを訝しげに見つめていた。
志麻
志麻
あの…手…離してください…
センラ
センラ
え?あ、あぁ…
センラが志麻から手を離す。
志麻
志麻
もう行っていいですか?
センラ
センラ
…‎チラッ
センラがそらるを見る。
そらる
そらる
フルフル
そらるが首を振るのを見て、センラは志麻に向き直った。
センラ
センラ
えぇっと…そうそう、1曲踊っていただけますか?
そらる
そらる
!?
志麻
志麻
は…?
センラ
センラ
さ。
センラが志麻に手を差し出す。
センラ
センラ
アルゼンチンタンゴは男同士で踊っても良いそうですよ。
俺がエスコートしますか?それともあなたがエスコートしてくださいますか?
志麻
志麻
…スッ
志麻がセンラの手に自らの手を重ねた。
音楽がなると同時に2人が動き出す。


一切無駄のない動き。
軽やかなステップをふむ2人。
彼らの周りだけ中世ヨーロッパの宮廷のようだった。
センラ
センラ
お上手ですね。
志麻
志麻
あなたも。
音楽がとまると、2人は礼をして離れた。
センラ
センラ
ありがとうございました。
志麻
志麻
こちらこそ。
志麻が去っていくのを見届けてから、センラはそらるの元へ戻った。
そらる
そらる
どうだった。
めい
めい
何かおかしなことありましたか?
センラ
センラ
犯人の特徴など、重要なことはわかりませんでした。
坂田
坂田
志麻、だっけ?あの人は?
センラ
センラ
彼は犯人ではない。
あらき
あらき
なんでわかる?
センラ
センラ
手です。
そらる
そらる
手?
センラ
センラ
美しい手でした。柔らかく、傷がひとつもない。
センラ
センラ
俺が今まで相手してきた殺人犯は、決まって手が汚かったですからね。
そらる
そらる
なるほど…
センラ
センラ
ただ…
センラが口をつぐんだ。
坂田
坂田
どしたん?
センラ
センラ
…彼は狙われる側の人間だ。犯人のターゲットは彼かもしれない。
彼の周りも警備した方がいいでしょう。
天月
天月
なぜそんなことが言えるんですか?
センラ
センラ
ただの勘です。
天月
天月
そんな勘だけで…!
そらる
そらる
天月落ち着け。俺の知る限り、センラの勘は外れたことがない。
天月
天月
そうなんですか?
センラ
センラ
俺、彼の周り警備します。
そらる
そらる
あぁ。他に、マークすべきやつはいるか?
センラ
センラ
そうですね…今はとくに。
そらる
そらる
よし、なら持ち場に戻ろう。
戻る途中、センラの背に寒気が走った。









嫌な予感がする…

センラは眉間に皺を寄せた。

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