第75話

sixty seven
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2022/03/24 06:55






義父母は葎の本当の保護者とよく似ていて、






救いようのないクズだった。






彼らにも息子がいた。






そう。葎が生まれて間もない頃に預けられた二つ年上の本当の兄、






『天瀬藍』だった。






これは親戚の人が話しているのを聞いてはじめて知った。






葎には伝えていない。






それでも葎は藍に本当によくなついていた。






義父母も天瀬と言う名字だったが、






義父と父は従兄弟だったらしい。






世間は狭いな。クズが感染うつるわけだよ。






藍は葎が来るずっと前から虐待されていたようだった。






こっちのほうの天瀬家には男尊女卑が根付いていた。






藍は家の事情、葎はいじめの心的外傷で、幼い頃から男装していた。






他にも理由はあると思うが、藍も葎も、似たような境遇の人を見つけて少し安心したのだろう。






二人とも次第に口数が多くなり、明るくなった。






そうして、葎のなかにいた人格はひとり、またひとりと葎に統合されていった。






親から虐待されているときにも、葎は頑張って表に出ていた。






強くなっていた。






最後まで残っていたのは“私”。






“私”も、もうすぐ消えようと思っていた。そんな矢先だった。



























小学六年生ももう終わりのその日は両親に無理矢理連れ出され、ドライブにでかけていた。






義父は車だけは愛していたな。






そこで起こった悲劇。






大破し、






ひしゃげて歪んだ車。






ピクリとも動かない義父母。






私が確認できたのはそこまでだった。






葎が気絶してしまったから。






次に見たのは藍の顔。






彼は最期に、「よかった......」と告げ、






葎の上に倒れ込んだ。






体は冷たかった。






........死んでいた。













それからだったよ。葎が私との入れ替わりを拒絶するようになったのは。






それほどまでにショックだったんだろう。






葎はその辛い境遇を乗り越えるために、






藍に成りきった。






そうして、葎は新たなる人格、






さっきまで君たちが接していた藍を生み出したんだよ。






そうして、また葎は自分の中に逃げ込み、自分で自分に蓋をした。






私は何もできなかった。













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