your side
ある木曜日の仕事後。
今日は元カレと会う日。朝から何故かそわそわしていた私は待ち合わせのレストラン前で彼を待つ。
向かいから歩いて来る背の高い男性にふと視線を向ける、、、。
彼だ。
大好きだった、、、。
でも別れるしかなかった、、、。
胸の奥がギューッとなる。
私の姿を目視した彼は私の元に駆け寄ってきたと思うと何も言わずに私を強く抱きしめた。彼が少しだけ震えていることに気がついた私は
と言って彼から離れ、彼の表情をうかがう。前もよくこうやって彼のこと見上げてたな、、、、なんて思い出に浸ってしまう。
笑顔の彼だけど、なんとなく不安そうに見える、、、。
彼は中華料理が大好きだったから、高級中華レストランの個室を予約しておいた。
ご飯を食べながら色々思い出話に花を咲かせた。楽しい話が沢山あってお酒も進む。
昔もよくこんな感じで飲みに行ったっけ。普段からそんなにはお酒を飲まない私だけど、この時ばかりは少し飲み過ぎなぐらい飲んでしまっていた。
そんな中、彼が突然黙り込み、まっすぐ私を見つめてきたかと思うと、真面目な面持ちで以前の事件についてのことを話し始めた。
彼の言い分はこうだ。
とにかく私に謝りたいと。
あのとき、もし自分が精神的にも肉体的にももっと大人だったら、私のことを守ることができたのに。
別れてしまったことに後悔しかしていないと。
久しぶりに会う元カレがあのときの本音を話してくれる事は嬉しかったが、本当に気負いだけはしないでほしい。
彼の顔は暗いままだ。
その顔を見ていてもたってもいられなくなった私は、空気を変えようと、手をパン!と叩き明るい表情で
と、言うと、彼は少し疑うような顔つきで
ストレートな質問、くるね。。ま、嘘つくのもあれだから。
そう告白した途端、彼の質問攻めにあう。どこで出会ったとか、何歳だとか、何してる人だとか、、、もう止まらない。
さすがに2人いる(しかもアイドル)という事実は伏せておいたけど、その他のことに関してはほぼ、嘘はなしで答えた。
そう言いながらテーブルに置いた私の右手を両手で握り、意地悪に微笑む。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。