side S
あれから1週間が経った。
俺も彼女も知らないふりを決め込んでいるが不思議と気まずいという感じではなく、前よりもより親密になったような気がする。
あの夜の事について言葉を交わしたわけではないが、俺に対する彼女の雰囲気や態度が少し柔らかになり、それがとても心地よい。
ただ、この1週間俺はずっと悶々としていた。
あの夜の彼女の妖艶な身体、表情、匂い、全てが亡霊のように俺に付きまとっている。
俺の頭はショート寸前だった。家では大酒を飲まないと眠りにつくことさえできなかった。
『もう一度あなたとしたい』
という欲望が渦巻いて、俺の心はまるで底がない泥沼にはまっていくようだった。
そんな中、中学校の同級生(男)から連絡があった。
東京に観光に来ているらしく、時間が合ったので一緒に飲むことにした。
子供の頃の話や現在の俺の仕事の話、友達の近況など色々話し、そろそろお開きかなぁと思っていたら
9:00pm
いい感じに酔っぱらった俺は友達と別れ、あなたに電話した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!