your side
目を覚ますと私は紫耀の腕枕で眠っていた。あ、そっか。昨日初めて一緒に夜を過ごしたんだっけ。
あぁ、、、腕枕、、、悪いことしたな、、、絶対に腕痺れてるよね、、、。
紫耀に申し訳なく思い、腕を戻して布団をかける。
私は自分の中で一つの決まりを作っていた。どちらかの部屋にいる時はもう一人の話はしないこと。
それが今の私が最低限できる二人への気遣いだと思ったから。
せめて部屋の中にいるときだけは100%その人のものであることを伝えたい。
朝日が当たってキラキラしている紫耀の寝顔を見てそのあまりの美しさに
と小さい声でツッコミを入れる。
近くで見ると長いまつげもツルツルの肌も、ぽってりした唇も、、、全部大好き。
そっと紫耀の頭を撫でて、朝食でも作ろうとベッドを出ようとしたその時、紫耀が急に私の腕を引っ張ってベッドに引き戻した。
勢い余って紫耀の上に乗ってしまった私は、
と紫耀から離れようとすると、紫耀は
と言って目を閉じて頭をこちらに向ける。
紫耀は恥ずかしそうに微笑んだ。今までは廉の方が甘えん坊だと思っていた私だったけど、どうやらそうでもないらしい。
この家に来てからと言うものそれが如実に現れ始めていた。
甘えさせてあげないとすぐに不安そうな表情を浮かべる紫耀のことが少し心配で、彼が甘えたい時には存分に甘えさせてあげる。
少しでも彼の不安を減らせればいいな、、と思いながら彼を包み込み、背中を撫でる。
すると紫耀は顔を上げて私にキスをおねだりした。
チュッ
と言って朝からイチャイチャ。年甲斐もなく一体私は何をやっているんだと思いながらも彼のペースにのまれてしまう。
私の身体を気遣ってくれることが嬉しくて思わずほっぺにキスを落とすと、紫耀は嬉しそうに微笑んだ。
と言って部屋を出た。
部屋を出てトイレに行き、一旦自分の部屋に戻る。
今日の天気を調べようと充電していたスマホを手に取る。すると、誰かからSNSのダイレクトメッセージが届いていた。
普段はSNSなんてあまり活用していない私だが、海外時代の友達や知り合いなどと連絡を取るときに便利なので一応アカウントは持っている。
メッセージを開いてみる、、、、、ん、、、?これって、、、、。
アメリカにいる元カレからだった。
メッセージを要約すると近々仕事で東京に来るそうで、話したいことがあるから時間を作ってほしいという内容だった。
今更会ってどうしようと言うのか。新しい第一歩をようやく踏み出したところなのに、今彼に会ってしまうとまだ過去に引き戻されるんじゃないかという不安に駆られ、すぐに返事はできなかった。
彼が来るのは1ヶ月後。とりあえず返事ギリギリまでしないでおこう。。。
元カレのことをそんなに深く考えていなかった私は、すぐにキッチンへ向かい朝食の支度を始めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。