your side
何故だろう。最近の永瀬さんは少し変わった気がする。
今までは何をするにも私に頼りっきりでまるで自分の息子のようにお世話をしてきたのだけれど。
最近、少しずつではあるが自分で出来ることは自分でする努力をしている。
毎日のようにあったご飯のリクエストもめっきりなくなり、1年以上お世話してきた私としては喜ばしい事だけれども何だか少し寂しい。
と楽屋で独り言を言っていると
と軽くごまかす。
2人で帰る支度をしていると、
コンコン
誰かが楽屋をノックしたので、ドアを開けてみると、
番組プロデューサーの姿が。
この人、この業界では知らない人はいない有名人。
セクハラ、枕営業などで訴えられた事があるとかないとかそんな噂もちらほら聞くエロプロデューサー。
ただ、テレビ界では大権力を持っていて、誰も彼に反抗できず、彼の独壇場状態。
そう。芸能界で生き残るためには彼に逆らうことはご法度なのだ。
私にも執拗に距離を縮めてきたり、腰のあたりを理由もないのに触ってきたり、セクハラまがいなことをしてくる厄介者で、私はこの人が大嫌いだった。
マジでキモい。あなたちゃんって私のこといくつだと思ってるねん、このエロP!とツッコミを入れたくなるが、ここは抑えて、、、
なんて、多分嘘であろう怪しい企画を餌にネチネチと攻めてくる。
はっきりと断ろうとしたその時、あろう事かこのプロデューサーが私ににじり寄ってきた。
私の腰あたりをめがけて手が近づいてくる、、、
うげぇ、こいつまた触ってくるんか、、キモい!と、思った瞬間、
バン!
と、結構な勢いで永瀬さんがテーブルを叩いた。永瀬さんはすぐさまこちらに来て私に向かって伸びているプロデューサーの手を掴み
単刀直入な質問をする。
と、しょうもない言い逃れ。
永瀬さんの目は、私が今まで見てきたいつもの優しい目ではなく、今まさに獲物を狩ろうとしてる獣のように鋭かった。
こんな目もするんだ、と心が弾んだ。
おぉぉぉ。永瀬さんビシッと言ってくれた!ちなみに大事な会議は嘘だけどね。
とそそくさと逃げていった。
プロデューサーが出て行った後、安心したのか少しぐらついた私。
永瀬さんはそれを見逃さず、私の肩に手を置いて支えてくれた。
その言葉を聞いて涙が出るほど嬉しかった。こういう状況はよくあったが今まで誰にも助けてもらった事なんてなかったから。
永瀬さんって意外と頼もしい子なんだなぁと感心して
と言うと、永瀬さんは満面の笑みで
とまるで子犬のようにすり寄ってきた。
私は永瀬さんの頭に手を乗せポンポンする。
そう言うと、永瀬さんは自慢げに笑った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。