朝、起きてご飯を食べて。
学校に行って、授業を受けて。
家に帰ったら風呂に入ってご飯を食べて寝る。
世界はそんなことの繰り返し。
そう、つまらない。
この世界はつまらないのだ。
どこからか声が聞こえてきた。
ふと顔を見上げてみると、女性がいた。
同い年くらいだろうか。
一体、誰に話しかけているのか。
辺りを見回してみたがそれらしい人物は見当たらない。
女性はこちらに顔を向けて話している。
後ろを振り向いても誰もいない。
…ということは。
なんと、彼女は僕に話しかけていたのだと言う。
それもそうだ。
確かに此処は人通りが少なくて、茂みに覆われていて、僕自身、隠れ家のように扱っていた場所だから。
なんなんだ、この人は。
さっきからすごいぐいぐいと絡んでくる。
彼女はそう言って微笑むと、颯爽と去っていってしまった。
でも、少し。
ほんの少しだけ。
楽しいと思った。
面白いと思った。
何故だか、彼女のことが頭から離れなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!