「あなた…?」と重低音が耳で響く程の
さとみくんの幻聴が微かに聞こえてきた
話しながらも自信がなくなってきたのか
瞬く間に表情が険しくなり「ごめん」と謝られた
明らかに前よりも変わりすぎてて動揺してしまう
頭上から降ってくる声にビクッと肩を動かすと
そこには私たちを見つけ出して、
近くの壁に体をもたれながらコクコクとひとりで
繰り返し頷いていた
「ねー?」と平然を装って言っているが
目は全く笑っていない
土下座しても許してもらえる気がしない…
莉犬くんはムッとした表情をして
指をつんつんと合わせながら目を逸らして
知らないふりをしているが嘘をつくのは苦手だ
「優しいでしょ?」と
強調して言って私を見て「ばかっ」と
今日も吐き捨てられた
おかしいよ!と莉犬くんは連呼して
何故か急にハッとなってさとみくんに
同情するように言っていた
「あのなぁ…」と一呼吸を置くと再び口を開いた
ジーンとその言葉に心を打たれていると
現実に戻すようにしてトドメの一言を告げられた
「かっけぇ…!」と莉犬くんも目を輝かせた
慕っている後輩のように、
さとみくんを見ながら「イケメンだ…!」と
未だに余韻が残っているらしい
"キスのコツを教えて欲しい!"
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!