『ピンポーン』
と、家のチャイムが鳴る。
あれ、鍵は??
本来このマンションは、鍵製だし、お飾り程度のインターホンはあるものの、
この家の場所を誰にも話していなかったので俺は少し警戒していた。
誰だろう…、もしかして…強盗?
そんな考えが一瞬頭をよぎるが、それはドアから聞こてくる誰かの声でかき消された。
『ジョングガ〜!』
外から、聞き慣れた低い声がする。
テヒョ二ヒョンだ。
その声は、いつも以上に、高揚しているような、酔っているような声だった。
そうなると、やっぱり疑問は鍵だが会社にでも忘れたのだろう、俺はその程度にしか思っていなかった。
そのまま急いでドアを開けると、そこには何かちっこいやつにおもむろに支えられているヒョンが。
えっ、……誰??
🐥「あ〜、ごめん、俺、ジミン。」
戸惑っている俺に、パッと下から顔を出したジミン先輩が声をかけてくれる。
それにしても、いささか辛そうだった。
先輩より、何倍も体がでかい………
🐯「あっ、ジョングガだあ〜〜///」
酔っているヒョンを支えているのだから。
🐥「あ〜、ごめんジョングガ。これには事情が…」
と、言って、気まずそうにジミン先輩がヒョンの腰から手を離す。
別に、そこは気にしていないし、ここまでヒョンを運んできてくれた人に暴言吐くつもりなど毛頭無かった。
🐥「にしてもお前…すごいとこ住んでんね……」
俺がテヒョ二ヒョンを受け取り、少し休める寝室へと肩を持って誘導している頃。
少し疲れながら、ジミン先輩が言う。
その声に、嫉妬は無さそうだった。
ジミン先輩は、良い先輩なのだと思う。
普通、自分より年下の奴が自分より何倍も豪華な暮らしをしているなんて、
嫉妬することだろうから。
🐰「まあ、立ち話はなんですし、少し中入ってくださいよ。
何か飲みます??」
ジミン先輩は少し迷った末に、自分の体と相談していた。
🐥「……ごめん…少しお邪魔する。」
仕事帰りに、自分より重く足取りのおぼつかない男をここまで届けるのは大変だったんだろう。
俺は誘ったくせに、じゃあ……とだけ言って中へ案内した。
先輩が手を洗っている間に、テヒョ二ヒョンをベットに寝かす。
あれぇ〜、ジョングガだぁ〜、なんて眠たそうにしながらも頬に手を伸ばしてくる先輩。
普段は、こんなに酔うまで飲まないのに、お酒は苦手で居づらくてすぐ帰っちゃうって言ってたじゃん。
家でも全然飲まないし………
と、少し悲しくなりながらも毛布をかけて電気を消した。
それでも、俺が離れるのが嫌なのかヤダヤダと、俺を引っ張る。
ダメと言っても、腕を掴んで離さない。
全く、何がしたいんだこの人は…‥
🐰「少し休んで下さい。明日二日酔いになって、会社に迷惑かけても知りませんよ。」
少し強く言うと、スッと腕を離す。
でも顔は、拗ねたままだった。
頭を撫でて、少し休んで下さい……と、今度は柔らかく言う。
そう言うと、満足そうにテヒョ二ヒョンは目を閉じた。
🐯「おやすみぃ、…ジョングガぁ…」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。