4限目終了のチャイムが鳴り、生徒達は一斉に動き始めた。
私は、ふとお姉ちゃんの姿を真正面に見つけた。
お姉ちゃんは、男子生徒と親しげに話している。
すると…
お姉ちゃんが、その男子生徒に抱き締められた。
弦は、口を開けたまま、呆然と立ち尽くしている。
そして、二人はゆっくりと離れ、お互いを見つめた。
…お姉ちゃん、何してんの?
弦がいるのに…
弦は、光のない目で、ただぼんやりと二人を見つめている。
お姉ちゃん達は、手を繋いでその場を去っていった。
私達は、弦をその場に残して、屋上へ向かった。
食事中、私達は出来るだけ、弦とお姉ちゃんの話をしないようにしていた。
でも、やっぱり気になる。
お姉ちゃん、どうしてあんなことしてたの…?
弦のこと、好きじゃないの…?
後ろから声をかけられて振り向くと、そこにお姉ちゃんがいた。
お姉ちゃんは、ノートが何冊か入った袋を手渡してきた。
本当に知らないように振る舞うお姉ちゃんに苛立ちが募り、私はつい強い口調で言ってしまった。
お姉ちゃんは、続けた。
お姉ちゃんの言葉を聞いた瞬間、私は涙が出た。
お姉ちゃんの顔を見れば、それが本当の理由だってことは分かる。
でも…
『…ごめん、ちょっと一人にさせて』
そう言った時の、弦の悲しそうな顔。
私は、それが忘れられなかった。
たとえ自分の恋が実らなくても、弦が幸せだったら、それでいい。
そう思っていたのに…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。