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まるで、世界の終わりみたいな夕焼けだなと思った。
大学の帰り道、川沿いの土手に寝転んで空を見ていたら、ふっと隣に影が落ちる。
聞き慣れた声のする方に目を向けると、見下ろしてきたのは、幼なじみの問だった。
その手には何故か小さなアイスキャンディがふたつ。
あれ、そんなこと送ったっけ?と思いながらスマホを見ると確かに送っていた。
多分、あれだ。明日のレポート提出に追われて頭がおかしくなっていたのかもしれない。
ぽん、と投げられたアイスを受け取る。
問は私の隣に腰を下ろして、赤く染まる空を見上げながらアイスを食べ始めた。
私は起き上がってアイスの袋を開ける。
さっきメッセージでも送った事を改めてまた発言する。
すると、冗談半分で言ったのに、問は真面目な顔で頷いてくれた。
問は空を見上げながら、最後の一口を食べ終える。
そして、そのまま言葉を続けた。
何故か、ドキッとした。
私は溶け落ちそうなアイスを、慌てて舐めとる。
昔からそうだ。
コイツは何でもない顔で、人の心拍数をバグらせることを言ってくるんだ。
慌てる私を見て、問はふふっと笑った。
あまりにも普通のトーンで言われたが故に、頭で理解するのかま数秒遅れた。
残り少ないアイスがぼたっと草むらに落ちる。
映画のワンシーンのように、風が吹く。
川面がきらきら光り、変わらず赤い空が反射してどこか幻想的にも思えた。
間抜けな声しか出ない私に、問は少し困ったように笑った。
問は少し身を乗り出して、私の顔を覗き込む。
ぐっと顔が近付く、逃げ場のない距離感。
昔から知ってる顔なのに、こんなに整っていたっけとか、睫毛長いなとか、こんな時に意味のわからないことばかり考えてしまう。
悪びれる様子もなく、あっけらかんとした態度。
その何とも言えない問の表情に耐えきれず、思わず笑ってしまった。
そして気付く。
たぶん、私もずっと前から好きだったことに。
隣にいるのが当たり前すぎて、気付かないふりをしていただけ。
次の瞬間、ぱぁっと笑顔になる問。
そう言うと、問はそっと私の頬に触れる。
ふっと真剣な表情に変わる。
律儀に聞いてくるあたり、らしいなとも思った。
私が頷くと、そっと唇が触れた。
柔らかくて、甘くて頭の中が真っ白になる。
世界が終わるならこのままでいいと、本気で思った。
その瞬間──────
額をぺちっと叩かれた。
飛び起きると、そこは大学の図書館だった。
どうやら机に突っ伏していたらしく、目の前に呆れた顔の問の姿が。
全部夢だったらしい。
一緒に食べたアイスも、告白も、キスも、全部。
穴があったら入りたい。
神様がいるなら、記憶を消してほしい。
夢の中で勝手に幼なじみに告白されて、勝手にキスされて、勝手に両想いになってた。
恥ずかしすぎて死ねるんですけど・・・。
俯く私を見て、問が不思議そうに首を傾げる。
「夢」というワードに思わずドキッとして、挙動不審になってしまった。
くくっと笑った問が、私のノートを閉じる。
荷物をまとめ、図書館を出る。
陽が沈みかけていて、空はオレンジ色に染まっていた。
夢で見た空の色よりも現実的で安心する。
同時にやけにリアルだった夢を思い出し、気恥ずかしくなった。
余韻が消えなくて、隣を歩く問を見ることができない。
すると・・・
前を向いたまま、いつものトーンで話し出す。
問はいたずらが成功した子どもみたいに笑った。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!