音を立てて唇が離れた。
駿佑『…』
あなた『…』
駿佑『いつからそんな可愛くなったん』
あなた『いつからだろうね?道枝くん見てると思ってることすぐ言っちゃうの』
駿佑『…ほんま可愛い』
そう言って優しく頭を撫でた。
すると苦しそうな顔をする道枝くん。
駿佑『…ごめんっ…ちょっと』
あなた『…』
道枝くんは私をゆっくり離し、
深呼吸をした。
駿佑『…』
あなた『…』
駿佑『いいよ、おいで』
あなた『無理しないで』
駿佑『…』
知ってる。
無理してるんでしょ。
これ以上やめて。
あなた『全部分かってるから』
駿佑『…ほんまあなたにはお見通しやな』
あなた『…成功したら…彼女になれるんでしょ?』
駿佑『…成功したらね』
あなた『…信じてるから』
駿佑『…ありがとう』
そう言った彼は目を逸らした。
無理だと言ってるみたいに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!