その日は
鬼ごっこ、かくれんぼとか色々して遊んだ
3人だからすぐに終わっちゃうんだけど
2人とも楽しんでたし、俺も楽しかったからいいのかな…
話は
学校の事とか家での出来事とか
触れていいのか分からなかったけど
さかたくんがニコニコしながら話してくれたから
俺らも安心した
──
突然立ち上がってそういった
イメージとは違く驚いた
小柄な体から吐き出される声はいつもの無邪気な声では無く
キレイで思わず聞き入ってしまうような声
低音も高音も安定している
まるで別人のよう…
俺らはぽかんとした
歌い終えるとニコッと笑った
何も反応しない俺らに戸惑っているようにも見えたけれど
そう言うと頭をかいて
少し恥ずかしそうにした
俺も歌うのは好きだけどこんなに上手くない
とても羨ましかった
するとさかたくんはぱっと顔を上げ
いつも以上に目をキラキラさせて言った
本当は歌手になりたいと思った事もあった
けれど、同級生の女子に
『よくそんな声で歌えるね』『上手くはないよね』
と言われた時から自信がなくなった
確かに自分の声少し苦手だった
でも、気にしないように
自分の好きなことに取り組んでた
なのに…
そう思っていると
こんな近くに俺と同じように悩んでる子がいた
そう思うと少し安心したし
なんだか元気になれた
──
時間が過ぎて2人でさかたくんを家まで送っていった
昨日までとは違ういい笑顔があった
今日はありがとうと家に戻って行こうとした時
突然あなたが口を開いた
約束?
あなたの発言に
俺らは顔を見合わせた
あなたは小指をこちらに差し出した
思わず吹き出してしまった
なんで笑うの!と怒るあなたにごめんごめんと謝りながら
さかたくんと俺はあなたと指切りをした
お母さんにバラされたらまずいけど
皆笑ってた
だからいいや
絶対歌手になってみせる
──
それから何ヶ月も過ぎた
俺らは相変わらず仲良しだったが
冬休みに入る前
終業式の日に
さかたくんは別の場所にまた引っ越していった
お父さんの実家に行くのだそう
俺もあなたも2日前に知らされた
俺はゲームのフレンド機能で友達になっているから
あまり寂しくは無かったけれど
あなたはほとんどゲー厶なんてやらないから
とても寂しがっていた
俺が中学生になってからあなたと
会う機会もなくなり
会っても昔みたいには話さなかった
あなたは小学校5年生くらいから友達とのトラブルが増え
精神的に不安定な時期があり
中2の時心因性記憶障害になった
俺は興味本位で調べたが
"精神的なストレス等によって記憶が失われてしまう障害。
通常、過去のことを思い出せない逆行性健忘で、不快な体験や出来事、特定の人物を思い出せなくなる"
のだそう。
だから無理に過去の事は話さなくなった
今までの性格でも無くなってしまったし
さかたくんの事もはっきり覚えていないのだろう…
──
これで過去は終わりです!
一応書いた分は上げときます…!
障がいの事を取り入れましたが
不快に思われる方がいらっしゃったらすみません…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。