第55話

裏腹な心と身体
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2021/05/08 00:01
壱馬
壱馬
なん…だよ…それ。

そんな風に言われると思ってなかった壱馬。
(なまえ)
あなた
もうこれでおしまい。
後は他の女の子にお願いして。
壱馬
壱馬
他の女の子って……。
(なまえ)
あなた
私は臣と別れるつもりは無い。
これからもずっと、彼の傍にいるつもりよ。

ハッキリ口に出された。
(なまえ)
あなた
そういう事だから…。

掴まれている手を払ってリビングに戻る。

追いかける壱馬はもう一度細腕を掴んだ。

さっきより強い力で。
壱馬
壱馬
ちょっと待てよ…。

グイッと引っ張れば長い髪が柔らかそうに揺れた。
壱馬
壱馬
じゃあ……さっきの時間は…なんだったんだよ…。

俺を受け入れてくれたんじゃ無いのか…?

俺たちは…

気持ちを通い合わせたんじゃ無かったのかよ…



クスッと嫌な笑い。
(なまえ)
あなた
子供ね…(笑)
壱馬
壱馬
え………。
(なまえ)
あなた
女を抱いたら自分のものになると思ってるなんて、子供だって言ってるの。
壱馬
壱馬
違うの…かよ…。
あなたもそう思ってくれたからっ…。
(なまえ)
あなた
違うに決まってるでしょ!

荒らげた声。
(なまえ)
あなた
めんどくさかっただけよ。

戸惑いとは違う。

悲しいとも違う。

形容出来ない壱馬の表情。
(なまえ)
あなた
一回やらせてあげれば、満足して静かになると思っただけ。

スルッと力が抜ける。

壱馬の手。
(なまえ)
あなた
売れっ子の欲求を満たす為だけのセフレなんて真っ平御免よ。
分かったら帰りなさい。

その一言で変わる壱馬の顔。

あなたの身体を壁に押付けた。


ドンッ!


と背中がぶつかる音。
壱馬
壱馬
本気で…言ってんのか…?

交わし合う険しい視線。

露骨な怒り。
壱馬
壱馬
俺が…
欲求を満たす為だけにお前を抱いたと…?
セフレにしたくてお前を抱いたと…?
本気で思ってんのかっ!?

ゆっくりと緩む。

あなたの口元。
(なまえ)
あなた
違った?(笑)

あなたの身体から手を離す。

自分の身なりを整えるとカバンを掴んだ。
壱馬
壱馬
分かった…。
もう来ねぇよ…。

ドスドスと足音を立てて部屋から出ていく。

バンッ!と玄関を思い切り締める音が響いた。



薄暗い部屋に一人残されたあなた。


ズルズルと壁を伝って座り込む。

膝を抱えれば涙がボロボロと勝手に溢れ出した。



ごめんなさい…

ごめんなさい…壱馬…


あなたの腕からは…

ちゃんと伝わっていた…


私を…

想ってくれている事が…


私の身体には…

しっかり残された…


あなたの…

ぬくもりが…


でも…

私にはこうするしかない…

突き放すしかないの……


あなたの…

為なの……
(なまえ)
あなた
………壱馬……。

許して……


涙が止まらなくて、あなたは抱えた膝に顔を埋めた。

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