歪む顔。
我に返るとパッと手を離した。
水を止めると静けさが戻る。
浮かべる苦笑い。
一人で泣いてたり…
急に来てみたり…
なんだよ…
こっちが戸惑うっつーの…
テーブルの上に出された野菜や肉のパック。
腕に抱えてキッチンに戻る。
長い髪を緩く結ぶと包丁を取り出す。
壱馬は落ち着かない感じでソファに戻った。
再びゲームに戻る気になれなくて携帯を触ったり置いたり。
包丁がまな板を叩く音。
それに混ざって聞こえてくる鼻歌はinvisible love。
こいつはホンマに…
なんちゅー声で歌うねん…
ジッと見つめてしまう壱馬。
その視線にクスッと笑う。
ポカンとして壱馬を見る。
ニッコリ微笑む。
再び動かす手。
嬉しいってなんやねん…
そんな嬉しそうに笑うなや…
お前は…
俺を貶してなんぼやろ…
ほんま調子狂うわ…
視線を投げれば、少しだけ寂しそうな顔だった。
包丁を置いてキッチンに手をつく。
あなたは目を伏せた。
ポツリとこぼされた言葉。
想像もしていない言葉だった。
なんやそれ…
どういう意味や…
壱馬はキッチンを挟んであなたの前に立った。
いつの間にか漂っていたいい匂い。
結局、あなたと壱馬は向かい合って食事を取った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。