食事が終われば楽しいゲームタイム。
思いのほか、あなたに苦戦させられた対戦。
段々壱馬の調子が上がってきた頃。
コテン……
肩に感じた微かな重み。
ハッとして顔を向ければ、隣に座っていたあなたの小さな頭がもたれていた。
スー…と穏やかな寝息。
あどけないくらいの寝顔。
あまりの無防備な姿に、甘い匂いが混ざっていた。
俺は兄貴じゃねぇのに…
寝顔なんて…
晒してんなや…
膝に乗せていた手が、コテンと落ちる。
あんたは…
俺の事が嫌いなんやと思っとった…
だから…
事あるごとに俺の歌をけなしてくるんやと…
けど…
"良かったわ…本心よ…"
正直…
めちゃくちゃ嬉しかった…
胸に広がってった…
こういうんを…
満たされるって言うんやって…
実感出来るくらい…
力の抜けた小さな手にそっと触れる。
眠っているのに、反応する指先はキュッと握り返してきた。
見つめる寝顔。
ほんの少しだけ開いた唇にドキッと胸が打つのを感じる。
なんで…
こんなにドキドキしてんやろ…
俺は…
あんたの事が嫌いや…
嫌いなんや…
なのに…
なんで…
自然と指先が絡む。
心臓の鼓動が強くて痛い。
うずくまりたいくらい。
なぁ…
あんたに俺は…
どう見えてるん…?
やっぱり…
登坂広臣の弟…か…?
ゆっくり。
引き寄せられるように近づいていく顔。
見て…欲しい…
俺を…
登坂広臣の弟じゃなくて…
川村壱馬…
として…
鼻先が触れ合う距離。
グッと強くなった甘い匂い。
ほんの少し顔を傾けると、壱馬はあなたに触れるだけのキスをした。
その頃。
ツアーで地方にいた臣。
控え室で携帯を眺めていた。
あなた……
何してっかなー…
あいつホントに電話してこねぇ…
茶化すようにケラケラ笑った。
確かに…
女はみんなそう言うことを口にしたがる…
そんなのは面倒なだけだ…
だけど…
あいつには…
ただの一度も言われたことがない…
臣は静かに携帯を置いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。