第16話

無防備な姿
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2021/04/24 00:47
壱馬
壱馬
っしゃ!調子ええで(笑)

食事が終われば楽しいゲームタイム。

思いのほか、あなたに苦戦させられた対戦。

段々壱馬の調子が上がってきた頃。



コテン……



肩に感じた微かな重み。

ハッとして顔を向ければ、隣に座っていたあなたの小さな頭がもたれていた。

スー…と穏やかな寝息。

あどけないくらいの寝顔。


あまりの無防備な姿に、甘い匂いが混ざっていた。
壱馬
壱馬
警戒心ゼロやな…。

俺は兄貴じゃねぇのに…

寝顔なんて…

晒してんなや…



膝に乗せていた手が、コテンと落ちる。



あんたは…

俺の事が嫌いなんやと思っとった…

だから…

事あるごとに俺の歌をけなしてくるんやと…


けど…


"良かったわ…本心よ…"



正直…

めちゃくちゃ嬉しかった…

胸に広がってった…

こういうんを…

満たされるって言うんやって…

実感出来るくらい…



力の抜けた小さな手にそっと触れる。

眠っているのに、反応する指先はキュッと握り返してきた。
見つめる寝顔。

ほんの少しだけ開いた唇にドキッと胸が打つのを感じる。



なんで…

こんなにドキドキしてんやろ…

俺は…

あんたの事が嫌いや…

嫌いなんや…

なのに…

なんで…


自然と指先が絡む。



心臓の鼓動が強くて痛い。

うずくまりたいくらい。


なぁ…

あんたに俺は…

どう見えてるん…?


やっぱり…

登坂広臣の弟…か…?


ゆっくり。

引き寄せられるように近づいていく顔。



見て…欲しい…

俺を…

登坂広臣の弟じゃなくて…

川村壱馬…

として…


鼻先が触れ合う距離。

グッと強くなった甘い匂い。



ほんの少し顔を傾けると、壱馬はあなたに触れるだけのキスをした。

その頃。


ツアーで地方にいた臣。

控え室で携帯を眺めていた。


あなた……

何してっかなー…

あいつホントに電話してこねぇ…

NAOTO
NAOTO
どしたの?
臣ちゃん(笑)
臣
別に……。
NAOTO
NAOTO
あなたから連絡ないなーって?(笑)
臣
何その心の中見えてますみたいなの。
怖いんだけど(笑)
NAOTO
NAOTO
あれ、図星だったの?(笑)

茶化すようにケラケラ笑った。
臣
あいつ、寂しいとか会いたいとか、そういうの無いのかなぁ…。
NAOTO
NAOTO
臣ちゃんそういうの求めないっしょ?(笑)
臣
そうだけどさぁ……
確かに…

女はみんなそう言うことを口にしたがる…

そんなのは面倒なだけだ…

だけど…


あいつには…

ただの一度も言われたことがない…



臣は静かに携帯を置いた。

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