第20話

桜の時日
549
2019/08/28 07:35
おい、人間
佐々木彩夏
失礼だわ。私には名前があるのに
これは何だろう?
馬鹿にしているのか、人間
佐々木彩夏
だーかーら、馬鹿にしてなんかないわよ。
でもね、私には佐々木彩夏っていう
素敵な名前があるのよ?
知らん
佐々木彩夏
酷いわね………
なら、あなたの名前は?
…………
桜の木に隠れて、楽しげに話すサビトと彩夏さんの姿。
そっか
これは錆桜の記憶だ。
サビトだ
佐々木彩夏
そうーーーーーーサビトさんね。
サビトさんは桜は好き?
嫌いだ。
佐々木彩夏
どうして?
…………嫌なことを思い出すから
佐々木彩夏
嫌なことって?
………………
佐々木彩夏
人生の先輩からのアドバイスです
我のほうが長く生きているのに何を言うのだろう?
佐々木彩夏
その嫌なことがいつか、
思い出しても良かったなと思えたなら、
それがあなたが、
 サビトが成長した証になるのです。
わからんな
佐々木彩夏
いつかはわかるよ
……………知るか
そうやって、自然とここに足を運んでしまうのだ。
桜の木に隠れて話す、人間との話はくだらなかった。
けど、不快ではなかった。








棗悠希
棗悠希
サビトはどうしてここにいるの?
道案内途中にきいたことがある。
われは昔、ここではない
もともと住んでいた山に恋人がいた。
しかし、祓い屋に山の妖怪
全てごと払われてしまったのだ。
棗悠希
棗悠希
サビトは逃げられたの?
ああ。我を、仲間が逃してくれた。
棗悠希
棗悠希
…………………恋人は死んじゃったんだね
でも生きていた
棗悠希
棗悠希
…………
そんな噂を聞いて我は出ようと思った。
ここを、この山を
そんな会話をした







人間、頼みがある
佐々木彩夏
いいよ、サビト
我は何も言っていないのに
佐々木彩夏
いいのーーーーーー
で、どんな頼み?
…………桜の木の絵を書いてほしい
佐々木彩夏
へぇ、サビトは
絵に興味があったんだ
それで、どこかの志美店にだしてくれ
佐々木彩夏
どうして?
遠くに行きたいからだ
佐々木彩夏
そう…………ここを離れちゃうのね
………大事な人に会えたら礼をしに
ここに来る。
それまでは、待っていてくれないか?
佐々木彩夏
はーい。分かりました。
あと、まだ報酬を頼んでなかったね
…………我ができることなら
佐々木彩夏
名前で呼んで…………それだけ
そうか…………待っていてくれ、アヤカ
佐々木彩夏
うん……










ありがとうーーーーーーアヤカ。
お前のおかけで、会えたよ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後日談というか、今回のオチについて書きたいと思います。
錆桜の記憶を見たあと、目が冷めたら彩夏さんの家にいました。
気絶しちゃったみたいです。
錆桜は絵を使って会いに云ったのです、恋人に。
長きの間、彩夏さんの山に居座っていたため、妖力が弱くなっていたらしいです。
わかったことは、錆桜は彩夏さんが好きだった。
気に入っていたというのが正しいのかもしれません。









私もいつか
心の底からの友人や恋人と出会ってみたい、そう思いました。

プリ小説オーディオドラマ