部活のみんなにマネージャーからバレンタインでそれぞれの手作りお菓子をあげた。
みんな喜んでくれてよかった。
でも、本番はこれからだ。
告白するわけじゃないけど。
部活が終わって制服に着替える。
そしてなんとなくいつもより鏡を見て身だしなみを整える。
結菜「頑張ってね」
あなた「うん。じゃあみんなおつかれ〜」
「おつかれさまでーす」
片手にカップケーキの入った袋を持って、緊張しながら校門に向かうとすでに翔也君がいた。
寄りかかってスマホを見ているだけなのになんであんなにかっこいいんだろう。
翔也君は私に気づくとすぐに笑顔で手を振ってくれた。
暗くなってきた空に対して、その笑顔は眩しすぎる。
あなた「お待たせ」
翔也「ううん、帰ろー」
いつものように話していても、どのタイミングで渡すか考えてしまう。
そうこうしているうちに駅が見えてきた。
電車に乗ったら渡せない気がする。
話が切れて無言になった瞬間、私は勇気を出した。
あなた「翔也君」
私が名前を呼ぶと優しい顔でこっちを見た。
あなた「今日バレンタインだから」
控えめに袋を差し出す。
翔也「えっ、いいの?」
あなた「うん、頑張って作ったので食べてください」
翔也「やった〜!ありがとう!」
私は本当にその笑顔を見ただけで幸せになれる。
軽くスキップをしながら前を行く翔也君はふと立ち止まって振り返った。
翔也「実は僕、他にもチョコもらったんですけど」
うん。
そんなことだろうと思っていたよ。
翔也「あなたさんからもらったのが一番嬉しい」
なんでだろう、と不思議そうにまた隣を歩き出す翔也君。
私の顔が真っ赤なことには気づいていない。
こっちは君の天然たらしのせいでドキドキが止まらないというのに。
お願いだからそんなに期待させるようなことは言わないでほしい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。