予鈴ギリギリで教室に入ってきた翔也。
かなり息を切らしている。
翔也「はぁ、はぁ…お、おはよ…」
あなた「おはよ。危なかったね」
翔也「寝坊した」
あなた「昨日は早起きしたのに」
翔也「うん、おかしいなあ」
あなた「かっこよかったのに」
翔也「…」
走ってきたからか、あなたが褒めたからかはわからないが、頬を赤くしている。
翔也「…朝からそういうのはちょっと心臓によくないです」
あなたが褒めたからだったようだ。
放課後。
帰る準備として鞄を机の上に置いて、教科書を入れようとした翔也は突然頭を抱えた。
翔也「ない…!」
あなた「何が?」
翔也「あなたにもらったキーホルダー!お揃いなのに!」
修学旅行でお互いに買ったお土産のキーホルダー。
あれからもう1年以上経つ。
あなた「あ〜…」
翔也「落としちゃったのかなあ…」
あなた「とりあえず職員室行ってみたら?落とし物入れにあるかもよ」
翔也「そうだね!ちょっと待ってて!」
翔也は走って教室を出ていく。
しかし、落とし物入れには入っておらず、担任の先生に聞く。
翔也「先生、あの、これくらいのうさぎのキーホルダー落としちゃったんですけど…届いてないですか?」
先生「俺は知らないなあ。ちょっと聞いてみるから待ってろ」
翔也「ありがとうございます」
職員室にずっといるのは申し訳なくて、廊下で先生を待つ。
先生「木全、悪いがそういうのは届いてないらしい」
翔也「そうですか…」
先生「すまないな」
翔也「いえ…さよなら…」
肩を落としたまま教室に戻った。
戻ってきた翔也は明らかに落ち込んでいて、あなたは優しく聞く。
あなた「どうだった?」
翔也「ないって…」
あなた「…ほら、行く途中で落としたかもしれないし、探しながら帰ろ!」
かなりショックを受けている翔也を慰めながら、教室を出る。
帰り道ではお互い慎重に探していて、
「ないなあ〜」
という言葉しか口にしなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。