木全君はよく昼休みに私のクラスに遊びに来て、汐恩とお昼ご飯を食べている。
それでわかったことだが、木全君は細いのにすごく食べる。
お弁当だけじゃ足りないらしくいつも購買でパンを買っている。
今日は新しいパンが入ったそうでご機嫌で2組に入ってきた。
隣の汐恩の席でそのパンを食べている木全君があまりに嬉しそうで話しかけた。
あなた「それおいしい?」
翔也「めっちゃおいしいよ!あなたさんも食べる?」
え、それは間接キスでは…
純粋な木全君は何も考えていないような顔でこちらにパンを向けている。
私は少しだけ手を添えて遠慮気味にひと口もらった。
翔也「おいしいでしょ!」
あなた「うん、ありがとう…」
恥ずかしくなる私とは反対においしさを共有できたからか満足そうな木全君。
と、ここで汐恩が余計な一言を言った。
汐恩「翔也、それ間接キス笑」
汐恩に言われてやっと気づいたらしい木全君はたちまち顔を赤くする。
翔也「ごめん、つい…嫌だったよね」
あなた「いや…ではなかったです」
私は何を言っているんだ。
どうしようもなく気まずい雰囲気が2人の間を流れる。
後から聞いた話、結菜と汐恩は顔を見合わせてニヤニヤしていたらしい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。