第97話

卒業③
1,882
2020/07/17 14:42
昇降口を出て、校門で待っている翔也のもとへ向かう。

あなた「お待たせ」

翔也「あっ、ううん。用事は? 終わった?」

あなた「あー、うん」

翔也「何だったの?」

あなた「んー…」

翔也「…告白?」

あなた「…まあ、そんなとこ…」

翔也「もしかして宇田君?」

あなた「…はい」

翔也「そうなんだ…でもさ、来てくれたってことは…断ったってこと?」

あなた「うん」

翔也「そっかぁー」
微妙な雰囲気になるかと思ったが

安心したような、少し嬉しそうな、そんな顔をする。

翔也「ねえ、最後だしさ…」










翔也「久しぶりだーーー」

翔也に連れてこられたのは、海だった。

懐かしい。
波に近づいて、指先を海に入れてみる。
翔也「冷たっ」

あなた「やっぱり3月は足入れられないね」

翔也「うん…」
しょんぼりしている。

うさぎ? いや、犬か?

一瞬、垂れた耳が見えた。

幻覚。

翔也「ちょっと歩こ」


波打ち際を並んで歩く。
いつ告白しよう…
翔也は何も話してくれない。

聞こえてくるのは波の音だけ。


様子を窺うようにチラッと横を見ると、何かを思っていそうな横顔の向こうに、美しい水平線が見える。

なんだか余計にドキドキしてしまって、視線を前に戻す。


再び頭は告白のことでいっぱいになる。



翔也「あなた」

突然後ろから名前を呼ばれた。


考えすぎて翔也と離れていたのに気づかなかった。

振り返って翔也を見ると、その目はまっすぐに私を見つめている。


その瞳に吸い込まれそうになる。


次にその口から出た言葉は、想像していたけれど、予想もつかなかったその言葉。




翔也「僕さ




あなたが好き」






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