第81話

紛失②
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2020/06/22 12:00
結局見つけられず、呆気なく駅に着く。

翔也「僕駅員さんに聞いてくるね」

あなた「私も行くよ」
2人で駅員さんの所へ行く。
翔也はあなたの鞄についたキーホルダーを指しながら尋ねる。

翔也「これ届いてませんか?」

駅員「最近は落とし物届いていないですね」

翔也「そうですか…」

駅員「申し訳ございません」

翔也「いえ、ありがとうございます」


駅にもなくて、とぼとぼと歩く翔也。

そのまま電車に乗る。
翔也「なんでないんだろ…」

あなた「ね…」

翔也「朝部屋出る時ちゃんと確認したのに…」

あなた「確認したの?」

翔也「うん。毎日してるよ。本当にお気に入りだったのに…」

あなた「そう、なんだ…」
毎朝キーホルダーの存在を確認しているということは

あなたには秘密にしておこうと思っていたが、口を滑らせてしまった。

翔也はそれに気づいていない。

一方のあなたは、翔也がそんなにも自分があげたキーホルダーを 大切にしてくれているという事実を聞いただけで、

頭の中にお花畑が広がりそうになる。


が、隣で悲しそうな顔をしている翔也を見てなんとか抑える。

あなた「電車降りてから見つかるかもしれないし、駅員さんもあったら連絡してくれるって言ってたから大丈夫だよ」

翔也「うん…ごめん…」

あなた「しょうがないよ。そんなに落ち込まないで」

翔也「ありがとう…」
翔也の降りる駅に着く。
あなた「見つかったら教えてね」

翔也「うん、バイバイ」


沈んだ気持ちをなんとか奮い立たせて、翔也は再び探しながら歩く。


しかしやはり見つからなくて、どんよりした気分で家のドアを開ける。
翔也「ただいま…」

リビングにいるお母さんに顔を見せる。

母「おかえり」


テーブルに置いてある物を見て、一瞬で目を見開く。
翔也「お母さん、それ…」

母「これ、翔也がいつもつけてるやつだよね?家の前に落ちてたよ」

翔也「それ無くしたと思ってたやつ!」

母「朝急いでたからどこかに引っ掛けちゃったんだね」

翔也「ありがとう!!」


嬉しそうにキーホルダーを見つめる翔也。




好きな子にもらったか、お揃いか…

そんなことを考えながら微笑ましく思うお母さん。

やはりお母さんには敵わない。

翔也「電話してくる!」
階段を駆け上がり、急いで電話をかける。
あなた「もしも…」

翔也「あなた、あった!」

あなた「えっ!本当に?」

翔也「うん!家の前に落としてた!お母さんが見つけてくれた!」
あなたはまだ帰り道だったが、そんなのは関係ない。

嬉しくなって声のボリュームが上がる。
あなた「見つかってよかった!」


翔也「ごめんね、迷惑かけて」

あなた「全然いいよ」

翔也「もう無くさないから」

あなた「うん、気をつけようね」

翔也「ありがとう、あなた」

あなた「いいえ」




もう二度と無くさない。



そう心に誓って

翔也は再びキーホルダーを握りしめた。




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