第61話

鯛焼
1,766
2020/06/07 05:00
6月5日0時0分。
木全翔也
誕生日おめでとー!!
あなた

ありがとう!

日付が変わった瞬間に翔也君からLINEが来た。

私も翔也君の誕生日にこれやりたかった…
木全翔也
今日の帰り何か奢るから何がいいか考えといて!
あなた

わかった!ありがとう








その日の放課後。


翔也「えっと、カスタードクリームとあんこ1つずつください」

「300円ね」

翔也「はい」

「まいどー!」
たい焼きを受け取って近くのベンチに座る。
翔也「ねえ、本当にこんなのでよかったの?僕パフェとかパンケーキとかなら奢るつもりだったのに」

あなた「ここのずっと食べたかったんだよね!それに翔也君の誕生日何もしてないし…」

翔也「そう?じゃあ来年はバイトしてるだろうし、ご飯でも連れて行ってあげるね」

あなた「うん、楽しみにしてる」
来年なんかどうなっているかわからない。

全く会っていないかもしれないのにそんな約束をしてくれる翔也君がかわいい。


声を揃えていただきますと言い、1口頬張る。
翔也「めっちゃうま!」

あなた「おいしい!」
評判通りすごくおいしい。

皮がパリパリだしクリームがぎっしり詰まっている。
翔也「カスタードおいしい?」

あなた「うん!」

翔也「1口ちょーだい!」
1年前にも似たようなことがあったような…

やはり翔也君は間接キスに抵抗がないらしい。


何も考えていなさそうな翔也君を見ていると気にしている自分が馬鹿らしくなってきて、翔也君の口に自分の食べかけのたい焼きを突っ込んだ。
翔也「おいしい!あんこ食べる?」

あなた「いただきます」

翔也「はい、あーん」

翔也君が持っているたい焼きをもらう。

あなた「あんこもおいしい」

翔也「でしょ!」
その後はやっぱり恥ずかしくなる。

いつもなら翔也君から話しかけてくるのに、なぜかずっと黙っている。


そのまま2人とも無言で食べ進め、たい焼きがなくなった頃。
翔也「ご馳走様でした。あ、ゴミもらうよ」

あなた「ありがとう」
なんとなく帰りたくなくて、立ち上がるのを渋ってみる。





翔也「嫌じゃないって言ってたもんね!」
いきなりそう言うとベンチからヒョイっと立ち上がって歩き出す。


最初は理解できなかった。

でも、そういえば去年翔也君からパンをもらった時にそんなことを言ったような…
まさかそのことを言っているの?


翔也君の考えていることが知りたくて慌てて追いかける。




前を歩く翔也君が振り返ると、少し頬を赤く染めて笑顔を向けていた。



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