第72話

自覚②
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2020/06/14 11:35
汐恩「でもさ、デートの前の日に俺聞いたら好きじゃないって言ってたじゃん」

翔也「そうだったっけ」

汐恩「それまで本当に好きじゃないって思ってたの?」

翔也「うーん…」
翔也は口をムッとさせて考えている。
翔也「好きじゃないっていうか…好きって思いたくなかったっていうか…」

汐恩「どういうこと?」

翔也「好きって自覚しちゃダメだと思ってたから」

汐恩「なんで?」

翔也「俺受験の年は彼女作らないって決めてるから」

汐恩「え」
翔也のその言葉に汐恩は驚きを隠せない。
翔也「あ、汐恩が酒井さんと付き合ったのにはすごく賛成だし、俺も嬉しかったし、応援してるから変に考えないでよ」

汐恩「お、おう」

翔也「ただ俺は1つの事にしか集中できないから」


汐恩「だから中3になる時も別れたのか。誕生日の1週間前に急に別れたとか言ってマジでびびった」

翔也「ああ…まあ、あれは受験関係なしに別れようと思ってたけど」

汐恩「ちゃんと理由言えよな。まあ色々…とか言って濁すから何かあったのかと思った」



翔也「…今だから言うけどさ、あの人汐恩のこと悪く言ってきたんだよ」

汐恩「え?」

翔也「いい人だと思ってたのに幻滅した」

汐恩「マジで」

翔也「そんなの言えるわけないだろ」

汐恩「まあ確かに…」

翔也「それに、受験あるから、とかも言えなかったんだよ。その時汐恩も彼女いたじゃん。それで汐恩まで別れたら嫌だったし」
とことん翔也の優しさを感じる。


汐恩「え、じゃあ告んないってこと?」

翔也「受験終わるまではね」

汐恩「卒業式とか?」

翔也「うん…一応その辺を考えてる」

汐恩「へぇー」

翔也「我慢できるかはわかんないけど」
汐恩「でもさ、もし卒業式に告って付き合ったとするじゃん。
それでずっと上手くいってさ、就活とか始まって忙しくなったらどうするの?別れる?」

翔也「うーん…」
翔也は腕を組み、目を瞑る。

想像しているらしい。
5秒ほどしてゆっくりと目を開けた。
翔也「何年も付き合ってるってことでしょ?その時は多分手遅れ。好きすぎて別れられないと思う」

汐恩「おお…」

想像を遥かに超えるあなたへの思いの強さに驚いたところで、少し意地悪な質問を思いついた。
汐恩「じゃあ逆にあなたに別れたいって言われたら?」

翔也「うーん…」
翔也は再び目を瞑る。

その時間はさっきよりも長かった。
翔也「別れないようにちゃんと話し合うかな。まあ、まず別れたいなんて思わせないけど」


汐恩「…翔也すげえわ」

翔也「そう?」


翔也の男らしさを感じると同時に、あと半年以上思いが通じることのないあなたを、気の毒に思う汐恩だった。


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