第79話

早起
1,780
2020/06/20 12:00


翔也「おっはよー!」
いつもの時間の電車に珍しく翔也が乗ってきた。
あなた「おはよ、早いね」

翔也「今日は早起きできた!だからすごく気分がいい!」
朝から非常に元気である。




電車を降りて、たわいもない会話をしながら歩く。

2人で歩く時はいつも逆方向だから、新鮮な感じがする。


私たちの前を4人くらいの小学生が歩いていた。

かなり小さいから1、2年生くらいだろうか。
小学校が近づいてきて、みんな走り出した。

翔也「小学生は元気だねぇ」

あなた「翔也も負けてないよ」

翔也「この子たちよりは大人だけど」

あなた「…中身はどうだろうね」
そんな話をしていると。
1番後ろを走っていた女の子が転んでしまった。
私たちは慌てて駆け寄る。

前を行くお友だちはその女の子に気づかない。

女の子は泣き出してしまった。
あなた「大丈夫?」

ただ泣いているだけで返事は返ってこない。

あなた「わー、血出ちゃってるね」
消毒をしないと絆創膏を貼れないから、とりあえずティッシュで血を拭き取る。
あなた「立てる?」

女の子は首を横に振る。
どうしようか困っていると。


翔也「あなた、僕の荷物持って」
翔也は私に荷物を渡して、女の子の前にしゃがむ。

翔也「大丈夫だよ」

そう言って微笑むと、背中を向けた。
翔也「はい、乗っていいよ」

おんぶをするらしい。

女の子は翔也の言う通り背中に乗る。



学校までは100mほどしかなかったからすぐに着いた。

校門の前で、翔也は優しくおろす。
翔也「血出ちゃってるから、保健室行ってね」

「お兄ちゃん、ありがとう…」

翔也「どういたしまして」

「お姉ちゃんもありがとう」

あなた「気をつけてね」

私はほとんど何もしていないが。
翔也「じゃあねー」
女の子とハイタッチをする。

その子はすごく嬉しそうにする。

私にはわかる。

その女の子の目は完全に恋する乙女だ。


お兄さんに優しくされたら恋に落ちるのにも納得がいく。

新たなライバル出現か…なんて。

「バイバーイ」
再び2人で歩き出す。
あなた「翔也すごいね。おんぶするなんて」

翔也「なんか、体が勝手に動いた」

あなた「絶対あの子翔也のこと好きになったよ」

翔也「ええ〜?あれだけで?」

あなた「うん。小さい子ってそんなもん」

翔也「困っちゃうなあ」

満更でもなさそうな顔。

あの子に嫉妬するわけではないが、ニヤニヤした顔を見ると少しだけ悔しくなるから。


あなた「…かっこよかったよ」

私がそう言うとほんのり顔を赤らめる。

恥ずかしそうに下を向いて笑う。
翔也「早起きっていいね」




気持ちのいい穏やかな風を感じながら歩く、いつもより幸せな朝。


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