結菜「あなた!おはよ!」
あなた「おはよう」
結菜「…何かあった?」
あなた「え?」
結菜「元気ないよ」
あなた「うん…落ち着いたら聞いて?」
結菜「わかった」
こういう時に無理に聞いてこないのが結菜の優しいところだ。
宇田「桧山さん、おはよー」
あなた「おはよう」
昨日さー、と宇田君が話し始めたところで翔也が来た。
宇田「翔也おはよー」
あなた「お、おはよう…」
翔也「おはよ…」
明らかに気まずい。
そんな私たちの雰囲気を察して宇田君もそれ以上話すのをやめた。
中学の頃を思い出す。
当時付き合っていた人と気まずくなった時、待ってました と言うようにやたらと話しかけてくる人がいた。
それに比べて宇田君はかなり大人だ。
高校生だからか。
一言も話さないまま昼休みになる。
この雰囲気のまま4人でお昼を食べるなんて、他の2人に迷惑をかけてしまう。
私は授業が終わった瞬間に弁当を持って、遠くの結菜の席に行った。
あなた「結菜、今日は2人で食べない?」
結菜「…うん」
結菜と2人で食べる。
翔也は汐恩と2人で食べているようだ。
チラッと見ると、バッチリ目が合ってしまい、慌てて逸らした。
そんな私を見た結菜は。
結菜「何があったかはわからないけど、早く仲直りしなよ?」
あなた「うん…」
5時間目、英語の授業。
こういう時に限って普段使わないテキストを使い
私はそれを忘れてきた。
困った。
翔也に見せてもらうべきか
宇田君に見せてもらうべきか。
悩んでいる私を見て、翔也は何も言わずに机をくっつけてくれる。
あなた「あ、ありがとう…」
全く集中できないまま、授業は残り5分。
突然肩をつつかれた。
顔を上げると、翔也は耳元に近づいてきて囁く。
翔也「今日2人で帰ろ」
私は無言で頷いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。