翔也「ただいまー」
あなた「おじゃまします…」
汐恩「しゃーっす」
学校帰り、木全君の家に遊びに来た。
とはいえ、さすがに2人きりは気まずくて汐恩にも来てもらった。
母「いらっしゃーい!」
あなた「桧山あなたです」
母「翔也から聞いてるよー、ゆっくりしていってね」
初めてお会いする木全君のお母さん。
肌の白さとか雰囲気とか似てる…
翔也「僕飲み物とか持ってくから先部屋行ってて」
汐恩「おう」
汐恩についていって木全君の部屋に入る。
想像と違ってすごく綺麗な部屋だ。
男の子の部屋っててっきりもっと散らかってるのかと…
汐恩「俺本当にいてよかったの?」
汐恩が部屋の真ん中にあるテーブルのそばに座ってそう聞いてくる。
あなた「初めてで2人はちょっと…彼女だと勘違いされても困るもん」
汐恩「まあ確かに」
ドアが開いて木全君が部屋に入ってきた。
翔也「あれ、あなたさんも座っていいよ」
そういえば緊張して立ったままだった。
汐恩の隣に座ると、木全君がケージの中から黒いうさぎを出して抱っこした。
翔也「木全くろです」
かわいい。かわいすぎる。
もちろんうさぎもかわいいけど、それ以上に声を変えてくろになりきっている木全君がかわいい。
くろを見て十分に満足したあと、ゲームをした。
あまりゲームをしない私には2人が強すぎたけど楽しかった。
汐恩 あなた「おじゃましましたー」
母「またいつでも来てね」
翔也「僕あなたさんのこと駅まで送ってくる」
木全君のお母さんにお礼を言い家を出る。
そして家の前で汐恩と別れて木全君と2人で駅に向かう。
今日初めての2人きりに緊張する。
翔也「僕女友達ほとんど家にあげたことないからちょっと緊張しちゃった」
そう言って照れ笑いをする木全君。
サラッと誘ってきたから慣れているのかと思っていた。
あなた「私も男の子の家あんまり入ったことないから緊張した」
木全君はそうなの、と少し驚いていた。
翔也「でもあなたさんにくろの魅力をわかってもらえたみたいでよかった」
その後はいつものようにくだらない話をした。
あなた「今日はありがとう」
翔也「うん、また明日ね〜」
あなた「バイバイ」
改札の手前で木全君と手を振り合う。
改札をぬけて少し歩いてから振り返ってみると、
目を細めてニッコリ笑っている木全君がまだ手を振ってくれていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!