その後の部活は集中できるはずがなかった。
汐恩とは一言も話さずに終わった。
他の人たちがみんな帰って、私はひとりで部室にいた。
今日あったことを考える。
瑠姫先輩に彼女ができて失恋したこと。
汐恩が慰めてくれたこと。
そして傷つけてしまったこと。
今日の出来事を全て思い出して私は泣いた。
どうすればいいかわからない。
悲しいのか悔しいのか申し訳ないのか、自分でもわからない感情を抱えてただ泣いていた。
20分くらい経っただろうか。
涙が落ち着いて辺りも暗くなってきた。
もう生徒は誰もいないだろう。
帰ろうとして校門に向かう途中、誰かに声をかけられた。
「あっえっと…あなたさん?」
あなた「木全君…」
翔也「帰り、遅いですね」
あなた「まあちょっと…木全君こそなんでこんなに遅くまで?」
翔也「今日ダンス休みだから残って勉強してたんだけど、寝ちゃって。起きたらこんな時間だった」
木全君はそう言って少し笑う。
翔也「あ…家どの辺?」
あなた「〇〇だよ」
翔也「じゃあ僕の2つ先だ」
あなた「そうなんだ」
無言のままなんとなく2人で歩き出した。
少し視線を感じる。
翔也「もしかして泣いてた?」
あなた「え?」
翔也「いや、さっきは気づかなかったんだけどよく見たら目赤いし、それに声も少し鼻声な気がして」
なんて答えればいいかわからない。
私が答えに詰まっていると木全君が再び口を開いた。
翔也「あの、僕でよかったら話聞きますよ?」
ほとんど話したことのない木全君。
普通なら話せない。
でもなぜか木全君になら話してもいい気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。