第65話

雨空①
1,816
2020/06/10 10:05
季節は梅雨。

それを物語るかのように、昼休み、4人でお昼を食べていると外は雨が降り出した。
結菜「あ」

あなた「ん?」

結菜「今日折りたたみ傘持ってくるの忘れた。天気予報で言ってたのに…」

あなた「あー…」
一緒に入ろうと言いたいところだけれど、今日は翔也君と2人で帰る日。
汐恩に彼女ができて、4人で帰る日以外は結菜は他の友だちと一緒に帰るようになった。

私と翔也君を2人にしてくれる、結菜の優しさである。

翔也「あなたさん、結菜さんに傘貸してあげたら?」

結菜「え、でもそしたらあなたは?」

翔也「僕が入れてあげるから大丈夫!ね、あなたさんいいよね?」

あなた「あ、うん。結菜、貸すよ」

結菜「本当に?助かる〜」
軽くOKしてしまったが、これは…









放課後。
翔也「わー結構降ってるね」

あなた「そうだね」

翔也「まあ僕の傘大きいから大丈夫!」

あなた「…うん」
大きいとは言ってもひとつの傘に2人で入るのだから当然近い。

歩く度に肩が触れる距離。

それなのに翔也君は何も気にせず話しかけてくる。



あっという間に駅に着いた。
あなた「入れてくれてありがとう」

翔也「いえいえ」
傘を畳む様子を見ていると、翔也君の肩が濡れていることに気がついた。

あなた「肩のところ濡れてるよ」

翔也「あー本当だ」

あなた「ごめんね、私のこと入れてくれたから…」
私のせいだと思って謝ると。
翔也「そういうこと言うのやめよ」

あなた「え?」

翔也「僕があなたさんを濡らしたくなくてこうしたの。だから謝んないで」
真剣な顔でそんなことを言われて何も言い返せない。
あなた「うん…」

翔也「はい、じゃあ電車に乗りましょう」

並んで電車に乗る。
翔也「家まで送ろうか?」

あなた「いや、いいよそんなの」

翔也「でも傘ないじゃん」

あなた「あー…お、お母さんが迎えに来てくれるから大丈夫!」

翔也「あなたさんのお母さん6時くらいまで仕事って言ってなかった?」

あなた「…あ!お兄ちゃんがいる!」

翔也「今の時期帰ってきてる大学生なんて珍しいね。っていうか最近お兄ちゃんが留学始めたって話してたの誰だっけ?」

あなた「…私です」

翔也「送りますね」

あなた「…ありがとうございます」


翔也君に言いくるめられて家まで送ってもらうことになった。

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