第66話

雨空②
1,776
2020/06/10 14:00
私の家の最寄りに着いた。

翔也君は傘を開く。
あなた「今度はちゃんと自分が濡れないようにしてね?」

翔也「あー、うん」


駅から家までは歩いて10分くらい。

その間もずっと話していた。

あなた「あ、ここです」

翔也「おー」
丁寧に家の前の屋根のある所まで送ってくれる。

あなた「本当にありがとう」

翔也「じゃあ僕はこれで」

あなた「あ、待って!」
帰ろうとする翔也君の鞄を掴んだ。

あなた「あ…濡れてるから、タオルでも貸そうかなあ、なんて…」
なんとなくまだ一緒にいたくて咄嗟に引き止めてしまった。

翔也「じゃあお借りします」



家のドアを開けて中に入る。
あなた「ただいまー。玄関で待ってて」

翔也「うん、お邪魔します」

洗面所にタオルを取りに行こうとした時。


リビングからお母さんが顔を出した。
母「あら、おかえり」

あなた「お母さん!?」

母「びっくりしすぎじゃない?笑」

あなた「いや…早いね」

母「雨降ってたね、濡れた?」

あなた「あ…う、うん」

母「傘ちゃんと乾かしてね?」

あなた「うん」
そう言いながら玄関の方へ行くお母さん。

あなた「あ!待って!そっちは…」



時すでに遅し。


母「あら、どちら様?」

翔也「あ…木全翔也です」

母「いつもあなたがお世話になってます」

翔也「い、いえ、こちらこそ…」

母「よかったらお茶でも飲んでく?」

翔也「あ、いや、えっと…」
翔也君の人見知りが発動している。
あなた「お、お母さん!受験生だから帰るよ!っていうか後で説明するからとりあえずリビング戻って!」

母「はーい」
ニコニコしながら戻っていく。


翔也君にタオルを渡して玄関の段差に腰を下ろす。
あなた「ごめん…まさか本当に帰ってるとは思ってなくて」

翔也「びっくりしたあ」

あなた「本当ごめんね」

翔也「それは大丈夫だけど…あなたさんとお母さんって似てるね」

あなた「え、うそ?言われたことあんまりない」

翔也「んー…なんか似てる」

あなた「そうなんだ…」
母「あなたー?木全君のこと駅まで送っていきなさいね」

あなた「わ、わかってるよ!」

翔也「え、いいよそんなの」

あなた「申し訳ないので送っていきます」

翔也「濡れちゃうよ?」

あなた「すぐお風呂入るから大丈夫」






今度は私が翔也君を言いくるめて、駅へと歩いている。

私は家にあった傘を持って、それぞれにさしているから距離が遠くなった。


翔也「なんか…距離あるなあ」

あなた「!! …そうだね」





翔也「僕も今度傘忘れてこようかなあ…」


翔也君のその言葉には気づかないフリをした。















あなた「ただいまー」

母「おかえり」
ニヤニヤしているお母さん。

これは手強そうだ。


あなた「…だから、傘忘れちゃった結菜に貸して、同じ方向だったから翔也君に入れてもらっただけだって!」

母「受験終わったらちゃんと連れてくるのよ」

あなた「ただの友だちだよ!」

母「かっこいい子捕まえたわね〜」

あなた「だから違うって!」



全く信じてもらえなかった。

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