私の家の最寄りに着いた。
翔也君は傘を開く。
あなた「今度はちゃんと自分が濡れないようにしてね?」
翔也「あー、うん」
駅から家までは歩いて10分くらい。
その間もずっと話していた。
あなた「あ、ここです」
翔也「おー」
丁寧に家の前の屋根のある所まで送ってくれる。
あなた「本当にありがとう」
翔也「じゃあ僕はこれで」
あなた「あ、待って!」
帰ろうとする翔也君の鞄を掴んだ。
あなた「あ…濡れてるから、タオルでも貸そうかなあ、なんて…」
なんとなくまだ一緒にいたくて咄嗟に引き止めてしまった。
翔也「じゃあお借りします」
家のドアを開けて中に入る。
あなた「ただいまー。玄関で待ってて」
翔也「うん、お邪魔します」
洗面所にタオルを取りに行こうとした時。
リビングからお母さんが顔を出した。
母「あら、おかえり」
あなた「お母さん!?」
母「びっくりしすぎじゃない?笑」
あなた「いや…早いね」
母「雨降ってたね、濡れた?」
あなた「あ…う、うん」
母「傘ちゃんと乾かしてね?」
あなた「うん」
そう言いながら玄関の方へ行くお母さん。
あなた「あ!待って!そっちは…」
時すでに遅し。
母「あら、どちら様?」
翔也「あ…木全翔也です」
母「いつもあなたがお世話になってます」
翔也「い、いえ、こちらこそ…」
母「よかったらお茶でも飲んでく?」
翔也「あ、いや、えっと…」
翔也君の人見知りが発動している。
あなた「お、お母さん!受験生だから帰るよ!っていうか後で説明するからとりあえずリビング戻って!」
母「はーい」
ニコニコしながら戻っていく。
翔也君にタオルを渡して玄関の段差に腰を下ろす。
あなた「ごめん…まさか本当に帰ってるとは思ってなくて」
翔也「びっくりしたあ」
あなた「本当ごめんね」
翔也「それは大丈夫だけど…あなたさんとお母さんって似てるね」
あなた「え、うそ?言われたことあんまりない」
翔也「んー…なんか似てる」
あなた「そうなんだ…」
母「あなたー?木全君のこと駅まで送っていきなさいね」
あなた「わ、わかってるよ!」
翔也「え、いいよそんなの」
あなた「申し訳ないので送っていきます」
翔也「濡れちゃうよ?」
あなた「すぐお風呂入るから大丈夫」
今度は私が翔也君を言いくるめて、駅へと歩いている。
私は家にあった傘を持って、それぞれにさしているから距離が遠くなった。
翔也「なんか…距離あるなあ」
あなた「!! …そうだね」
翔也「僕も今度傘忘れてこようかなあ…」
翔也君のその言葉には気づかないフリをした。
あなた「ただいまー」
母「おかえり」
ニヤニヤしているお母さん。
これは手強そうだ。
あなた「…だから、傘忘れちゃった結菜に貸して、同じ方向だったから翔也君に入れてもらっただけだって!」
母「受験終わったらちゃんと連れてくるのよ」
あなた「ただの友だちだよ!」
母「かっこいい子捕まえたわね〜」
あなた「だから違うって!」
全く信じてもらえなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。