第4話

片恋
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2020/05/03 12:00
瑠姫先輩に告白できない理由。それは…
「瑠姫ー、来週の練習試合のことで聞きたいことがあるんだけど」
そう

同じマネージャーのあかり先輩。
あかり先輩はかわいいし優しいし話しやすいから私も大好きな先輩。マネージャーの仕事もかなりできて先生やプレイヤーからの信頼はすごく厚い。
そんなあかり先輩は瑠姫先輩と3年間同じクラスで部活でもすごく仲が良い。
誰がどう見てもお似合いだしなんで付き合ってないのか周りが不思議に思うくらいだ。
少し遠くで話している2人を見て私はため息をつく。
あと1年早く生まれてたら今頃瑠姫先輩の隣にいたのは私なのかな。

瑠姫先輩を好きになったのは去年の夏だった。
午前中に課外を受け、お昼ご飯を食べて午後4時まで部活というのが夏休みの7月中続いた。
その日も部活が終わって片付けをしていた。少し自主練をしてから帰る人たちが多かった。もちろんその中に瑠姫先輩もいた。
片付けが終わってたまたま私が帰るのいちばん最後だった。部室に鍵をかけてふとグラウンドを見たらまだ残って練習をしている人が1人いた。

それが瑠姫先輩だった。その姿を見つめていると瑠姫先輩がこっちに気づいて手を振ってくれた。

私はあわてて会釈をしてすぐに帰った。
8月に入ると課外もなくなり部活は午前中だった。
8月のある日。

親が買い忘れた物を買ってきてと頼まれて夕方スーパーに行った。その帰り道。1人で歩いていてふと道路の反対側を見ると走っている人がいた。

瑠姫先輩だ。

あんなに上手なのに人一倍努力していてそれを表に出さない所がすごくかっこいいと思った。

そんな先輩に私はいつの間にか惹かれていた。



ドリンクを作りながらそんなことを考えていると肩を叩かれた。
汐恩「手止まってる」

あなた「あ、ごめん」

汐恩「なにぼーっとしてるの」

あなた「別に。ちょっと考え事」

汐恩「また瑠姫先輩?」

あなた「ち、ちがうよ」

汐恩「あの2人仲良いよな」

あなた「そうだね」

汐恩「まあ、そんな落ちこむなよ」
汐恩は私が瑠姫先輩を好きなことを知っている。
私はすぐに顔に出てしまうタイプだから先輩と話しているのを見た汐恩は私の気持ちに気づいたらしい。
あなた「うるさい、余計なお世話ですー」

汐恩「人が心配してるのになんだよそれ」

あなた「はいはい、ありがとう」

汐恩「素直じゃねーな」
素直じゃないことくらい自分がいちばんよくわかってる。それは汐恩に対しても瑠姫先輩に対してもそう。

私はドリンクを作るのを再開するために水道の蛇口をひねった。




汐恩「素直じゃないのは俺の方か…」
汐恩が言ったその言葉は水の音でかき消されて私には届かなかった。

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