第45話

手紙①
1,845
2020/05/29 05:00
翔也君にバレンタインでカップケーキをあげてから1ヶ月経ち、今日はホワイトデーだ。


結局、この1ヶ月手紙について翔也君から何も言われていない。

普通に話したりLINEしたりはするけど。
やっぱり渡さない方がよかったのかな…と後悔しながら学校に行った。



今日は部活が休み。

昼休み先生に頼まれて春休みの県外遠征についてのプリントを、各クラスを回って配っていた。


1組の教室に入るとサッカー部の男子が固まってお昼ご飯を食べていた。
そして翔也君がいる女子の輪の声が聞こえてきた。
翔也「これお返し、1人2個とって〜」

「木全君ありがとう!」
翔也君は女子にお返しとしてファミリーパックのお菓子を配っていた。


プリントを渡し終えて教室を出ようとした時、翔也君に あなたさん、と声をかけられた。
翔也「あなたさんにも後でお返し渡すね、今日一緒に帰れる?」

あなた「うん」

翔也「じゃあまた後でね〜」

相変わらずのかわいい笑顔だ。




何より私にもお返しをくれるということが嬉しかった。












放課後、校門に向かうとやはり翔也君の方が先にいた。
あなた「お待たせ、いつも早いね」

翔也「女の子待たせちゃダメかなって」
そうやって突然キュンとすることを言ってくるから心臓に悪い。



しばらく話しながら帰っていると

翔也「はい、これお返し」

翔也君が小さめの紙袋を差し出した。

あなた「ありがとう」
受け取って軽く中を見てみると、明らかにさっきクラスの子たちに渡していた物とは違う物が入っていた。
あなた「これさっきと違う?」

翔也「あー、あなたさんにあれ渡すのはちょっと違うかなって思ったので」

あなた「ありがとう…」
口元が緩むのを頑張って抑える。
翔也「一応食べてみたんだけど自信はないので、まずかったらすいません」

あなた「えっ手作り?!」

翔也「僕が食べたくて作っちゃいました」

あなた「翔也君ってお菓子作りもできるんだ…」
改めて翔也君のスペックの高さに驚く。

恐るべし、木全翔也。




それより、私はクラスの子たちと違うんだ…



ちょっとでも翔也君の中で私は特別な人になっているのかな…

なんて浮かれた考えが出てくるほどだった。

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