第48話

もう…十分満たされた
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2020/02/01 06:56
長椅子に座っていた私は刀の鞘に手をかけ、男の子から飛び退く。
あなた
その男の子の身に乗り移り、私を殺しに来たというわけですか…?
焦らないで。落ち着いて。近くには実弥だっている。いざとなれば私が抑えている隙に頸を切ってもらえば…
男の子
まあ、安心しなよ。僕はもう鬼じゃない。考えてもみろ、こんな昼間に鬼が出歩けると思うか?
信用しても…いいのでしょうか。
あなた
鬼でないとしても…私を殺すか殺さないかまでは分かりかねます。
男の子
大丈夫、殺しはしない。むしろ俺はお前に感謝しながら死んだ方だ。
あなた
感謝…?
男の子
俺はお前の村の人を皆殺しにした鬼なんだ。
あなた
あ…あの時の!
あの日のことは、鮮明に覚えています。
あなた
あなたには、花紅柳緑を使ったのでした。柳の木が上へ導いてくださいましたか?
男の子
ああ。上へ連れて行ってくれた。でも、やはり俺の犯した罪は大きい。生まれ変わるのは難しいようでな。
あなた
そういえば生まれ変わったら真っ先に私に会いに来ると、おっしゃっていましたね…
男の子
だから、親から愛情がしっかりもらえている子供に1週間だけ体を借りている。この1週間で、お前に会えるか心配だったが…会えてよかった。
あなた
そうでしたか…それであの日からあまり日にちは経っていないのに私に会いに来れたのですね。愛されたかったあなたの心は、満たされていますか?
男の子
もう…十分満たされたさ…この体で過ごす最後の時を、お前と過ごせて落ち着いた…本当に、ありがとう…
男の子のお母さん
小助!!心配したんだよ…!!
男の子
お母さん!!
男の子のお母さん
このお姉さんとお話していたのかい?
男の子
このお姉ちゃん知らない人だけどね、なんだかすっごく優しそうなんだ!
男の子のお母さん
すいません、うちの息子が…
あなた
いえいえ、別に構いませんよ(*´`)
その子のおかげで私の心も落ち着きました…
男の子
ばいばい!知らないお姉ちゃん!
男の子のお母さん
本当にありがとうございました!
男の子のお母さん
お姉さんとどんなお話をしたんだい?
男の子
んーとね、覚えてない!!
男の子のお母さん
あらまあ…( ˊᵕˋ )
あの子の体からあの鬼の方の魂が消え去ったようですね…
不死川実弥
悪い、待たせた。
あなた
いえいえ、少ししか待っていませんよ(*´`)
不死川実弥
そうか、なんか団子でも食うかァ
あなた
そうですね!

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