あなたちゃんがそらるさんを探しに行き、
教室には僕一人しか残っていなかった。
一人、空っぽになった教室でため息をつく。
すると、教室のドアがガラッと開いた。
思わず、しゃがんで机の影に隠れてしまう。
少し顔を出して入ってきた人を確認する。
やっぱり、
そらるさんだ。
そらるさんは、振り向いて僕の姿をとらえると、
ものすごい早さで僕のところへやって来た。
目が潤んで、息も切れてる。
きっと、学校中を探しまくったんだろうな。
………そらるさんが行ってしまい、
また教室には静寂が走る。
涙が溢れてくる。
小さい頃からヒーローになりたかった。
僕の中でのヒロインはあなたちゃんだった。
でも、ヒロインがいない今、物語は続かない。
ヒーローにだってなれない。
結局僕は主人公には、なれないんだよ。
台本を読み間違えたから。
あそこで、『そらるさんなんか止めて僕にしなよ』って。
そう言えば、物語は台本通りに進んだかもしれない。
でも、僕は台本を読み間違えた。
ヒーローにも、ヒールにもなれないんだ。
………………主人公には、なれない……。
諦めきれない。
だって、ずっとずっと昔から好きで、
離れてもずっとあなたちゃんの事を想ってたんだ。
あなたちゃんがいたから、
今まで僕は生きてこれたんだ。
いきなり出てきたそらるさんに取られちゃうなんて、
嫌だ。
僕の方がずっとずっと前からあなたちゃんの事想ってたんだ。
何で神様はこんな不公平なんだろう。
僕は、今まで散々嫌な目に遭ってきた。
でも、別にどーでも良かった。
またあなたちゃんに会えるって信じてたから。
なのに、何で……何で神様は……
僕の執着心が異常なのも分かってる。
過去にすがり過ぎなのも分かってる。
でもさ、たった10年離れただけで
僕は、大好きな人を取られなきゃいけないの?
そんなの…
そんなの、あんまりじゃないか。
神様、ねぇ神様
僕は、どうすればいいですか?
一人で涙を流す。
静かな教室に響くのは嗚咽だけ。
そんな僕の元に突然パサッという音と共に
どこからか本が落ちてきた。
小さい頃大好きだった絵本。
恐る恐る目の前に落ちてきたそれを取って、
1枚ページをめくる。
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放送中に、失礼します。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!