まふまふside
ぶつかった女の子に声をかける。
やっぱり。あなたちゃんだ。
いきなりあなたちゃんが泣き出した。
なんで目の前のあなたちゃんは泣いてるんだろう。
それに、なんで走ってたんだろう。
僕には何も分からない。
けど…………
あなたちゃんの背中に手をおいてポンポンと優しく叩く。
あなたちゃんが少し微笑んでありがとうと言う。
その姿が最高に可愛くて、やっぱり好きだなぁ……
なんて思う。
あなたちゃんの反応から分かる。
おばさん………亡くなったんだ……。
沈黙が続く。
知りたくなかった。
そらるさんと同居??
そんなの、知りたくなかった。
やっぱりあなたちゃんが好きなのはそらるさんで、
僕じゃないってことを知らしめられてるみたいだ。
本当は、家になんて送りたくない。
そらるさんの所へなんて送りたくない。
でも…………送らないと……
頭の中を色々な考えがぐるぐると巡る。
辛さ、悲しさ、好きという気持ち。
そして、『僕のところへ来ればいいのに』
という黒い気持ち。
駄目だ駄目だ。
やめろ。僕。
これ以上、欲深くなるな。
欲を振り払うように後ろを向く。
すると、
あなたちゃんが、辛そうな顔をしながら
立ち尽くしていた。
立ち尽くすあなたちゃんに、
優しく聞いてみる。
震えた声であなたちゃんが言う。
そらるさんと……
好きな人と距離を置くのはきっと辛いだろう。
僕は、言っている意味をすぐに理解できなくて、
戸惑うことしかできなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!