俺が黒スーツの奴らに連れていかれた場所は、10分程の場所にある大きなビルだった。この建物は厳重な警備体制が敷かれていて、幼い頃に友達と見かけた際は
「秘密結社の建物かもね!?」
「うおー。かっこいい!!」
とかなんだか言ってた気がする。こういう些細なことを考えて今の現実から離れようとしている。でもまさか。自分が犯罪者…
「逮捕」
この言葉が俺の頭の中でメリーゴーランドのようにグルグルと回り続けては止まない。
「嫌だ」
「怖い」
「助けて」
俺の心の声は誰にも届かない。
ただ俺の中で反響して。それで終わり。
しばらくして俺たちを乗せた車は地下の駐車場へと入っていった。そこには刑事ドラマでよく見るような黒いレトロな車や覆面パトカーが並んでいた。
「降りろ。」
赤松というらしい男が俺に言った。車の中で彼らが話しているのを少し聞いていた。今俺に話した小太りの男が赤松。俺の家に来た時。「逮捕する。」と言ってきたのが。背が高くスタイルの良い笠原。
「とりあえずは署長室へと向かう…いいな?」
赤松が淡々と言った。
「はい…」
署長室?なんだそれは。アニメやマンガの世界では聞いたことがある。俺が今いるこの場所は一体どこで何をする場所なんだ…?
エントランスに入ると警備員の数が倍程に増えていた。厳重な警備だ。そして俺は壁に飾ってあった文字を目にして、自分がどこにいるのか。そしてこれから何をされるのかを一瞬で悟った。そう、壁に描かれていた文字とは。
---FBI---
俺は寒気がした。身体中が急にガクガクと震えている。なぜ。FBI?。俺が?。え?
そうして俺は署長室の扉の前に連れていかれた。
「さぁ。何か言い残す事はあるか?」
赤松が真顔で俺に言う。
「え、お…俺。ここで死ぬんですか…?」
赤松は俺の問いかけに答えず一切の表情を変えずに言った。
「最後に言い残すこと…遺言…だな。当たり前。お前は」
「ここで死ぬ…」
「なんてな。」
赤松はからかうように嘲笑した。
俺はホットした。汗が身体から流れ落ちる。脇の汗は俺のTシャツに大きな湖を映し出している。
「あまり遊ぶな。赤松」
真面目と思われる笠原はそう口にした。
「さぁ。入れ。」
俺は腕を捕まれ。署長室の中に足を入れる。
「……やぁ。」
威厳のある表情をした男だ。
「自覚は…しているね?」
「君は重大で凶悪な犯罪を犯した」
「"犯罪者"で間違いないね…?」
身体がまた震え始める。口があかない。言葉を発せない。
「そう。怖がらなくても良い…」
「君は…もう終わるのだからな。」
俺は混乱で意識を失った…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!