.
二階へと向かっている人混みの中から2人で抜け出しアリーナ席の方へと向かう。
私、ライブに来るの初めてだから今めっちゃドキドキしてる!
「え、百合席ここ!?」
百合「そうみたい!めっちゃ近いじゃんこれ!」
うちらの席に行ってみると目の前にステージが…!
え、こんなに近くていいのって感じ!
しかも、ステージの真正面。
「めっちゃラッキーじゃん!」
百合「んね!うちも初めてだよこんな近いの!」
「あ、そうだったんだ。…楽しみだね!」
百合「うふふ、うん!」
早く始まらないかな…
_
百合とどんな曲歌うんだろうねとか色々話していたらもうあっという間に開演の時間になった。
いつ始まるのだろうとキョロキョロしていると、辺りが真っ暗になり一瞬にして黄色い歓声が上がる。
「え、なに?」
百合「もう、始まるよ!」
百合の言葉に頷いて、目の前にある画面を見つめているとメンバーの名前と映像が次々と流れているのがわかった。
Alan , Reo , Yuta …
私が知らない人たちの名前が次々と出てくる。
私が調べたのは数原さんだけで、他のメンバーのことはあまりよく分からない。
これだったら、全員分ちゃんと調べてくればよかったなぁ…。
他のメンバーの映像を見ているが、まだ数原さんの名前が出ていない。
最後の方なのかな、数原さん。
その時、
…Ryuto Kazuhara
あっ、りゅうとかずはら…ってあの数原さんだ!!
彼の名前が出たのは1番最後。
コンビニで会った時とはなんか全然雰囲気が違うけど、あの時会ったのは確かに数原さんだったんだ。
私はあの時本当に凄い人と会っちゃったんだって今改めて思うよ。
「…やっぱりカッコいいなぁ…数原さん。」
思わずそんな言葉が無意識に自分の口からこぼれた。
百合「…何、あなた龍友くんのこと好きなの⁉」
隣でニヤニヤしながら横腹を突っついてくる。
なんで聞こえるの!?
こんな大きい音が流れているに…。
なんか、すごいね百合。
「す、好きっていうか…かっこいいなぁって思って」
百合「ふぅーん…。」
くっそ、すっげぇニヤニヤしてやがる←
このままだとコンビニの件までバレる気がするけど…ま、大丈夫だよね。
他のメンバーの人たちは申し訳ないけど分からない。ということで、数原さんを観察しよう!
…今、少し観察して見たけど、とりあえず筋肉凄すぎない?あれ、ボーカルでしたよね?って疑っちゃうくらい笑
あと、めっちゃ歌上手だな~。
なんかスゥーって歌詞が入ってくる。
数原さんの低音の部分とか聴いててすごく心地いい感じなんだよね。
あ、片寄くんも勿論上手だよ!?
片寄くんは数原さんとは違ってちょっと声が高めだけどそれも私は好き!数原さんとのハモリもバッチリだし!!
そして、観察しててもう1つわかったことがある。
…数原さんは色んな所で指差ししたり手を振ったりしているってこと。
たしかに他のメンバーもそういうことはしてるけど、数原さんだけにはなんとなくして欲しくないなって思う。
アーティストとしてこういうのは仕方のないことなんだけどね…笑
でも、胸をぎゅーって締め付けるこの気持ちは…何?
_
『そばに居て君の笑顔のため捧げるよ all my days』
これ、なんていう曲なんだろう。
この曲の題名は分からないし、まだ聴いたことのない曲なのに何故かこの歌詞が耳に残る。
数原さんにそんなこと直接言われたらすごいドキドキするんだろうなぁ…
って何考えてるんだ私!
『愛してるよ』((ニコッ
「…ッ///」
え…っ、今絶対こっち見て笑ってくれたよね!?
そんな事されたら顔赤くなっちゃうじゃん…//
もしかしたら私に対してではないかもしれないのに、何故かすごく嬉しい。
あんまり経験したことはないけど、この感情ってもしかして…。
_
それから気が付けばあっという間に時間が過ぎ、とうとうアンコールまで来てしまった。
こんなステージに席が近いのに数原さんがあまりこっち側に来てくれなかったなぁ…。
ちょっと残念。
『この空の下で巡り会う奇跡 見上げた虹の向こう会いに行くから この声が届くまで歌い続けるよ いつでもどんな時も君を想ってる』
この歌詞と数原さんの切ない歌い方が凄い心に響くなぁ…っ。
だんだん何故か目の前が歪んで行く。
そっと自分の頬に手を当ててみると涙が流れていた。
なんで私泣いてるんだろう…ッ。
歌を聴いて泣いたことなんて今までないのに…。
パチっ
また数原さんと目があった気がした。
その時、やっと分かった。
やっぱり、この感情が恋なんだって…。
私はできるならば貴方のそばに居て一緒に笑い合いたい。
でも、それはきっと許されるものじゃない。
そんなの言われなくたって分かってる。
だけど、たとえこの恋が叶わなくても私はずっと貴方の事を想ってる…。
.
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。