第54話

52話
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2021/10/24 06:24
無限に広がってそうな空間、そんな空間の真ん中に位置する大きく円を描いて回る、木で出来た螺旋階段、でもそんな大きな螺旋階段を支える支柱が無い。なんで、崩れていないか甚だ疑問だ
そして、空中に浮かぶ無数の本。どれもページを一通り開いてから閉じる、一通り開いてから閉じるというのを何度も繰り返している
この光景に慣れているのか、何事もなく段差のない木で出来た螺旋階段を下りていくアリア
呆気にとられている状態から、はっと我に帰り、急いでアリアに着いていく
上にも一応階段は続いているみたいだが、白い霧みたいなのがかかっていて、よく見えない
焦げ茶色の木で出来たアンティーク風の柵を手で掴みながら、どんどん下に下りていく
さっき上にあった本は、どれだけ下に下りて行っても、無数に宙に浮いている
そして、一通りページを全部開いて閉じるという一連の動作を何度も繰り返している
手を伸ばしても、到底届きそうにない
「この空間…どうやって創ったの?」
周りを見渡しながら、興味津々でアリアにそう聞くSou様
「どうやって創ったかは分からないんだ。この空間を創ったのは私ではなく、旧友だからな」
「へー…いつか、その人に会ってみたいな…」
Sou様がそう言った瞬間、表情を1つも変えなかったアリアが、哀情に満ちた顔をした
「残念ながらな…旧友は死んでしまった」
「死んだ…どうして?…」
思わずそう聞いてしまったが、そんなに深掘りする話ではないと気付き、「なんでもない」と訂正しようとしたが、アリアが先に口を開いた
「寿命で死んだ。人間だから、やはり吸血鬼よりも先に死んでしまう。魔法で抗おうがな」
「まあ、あいつは魔法で抗わずに、潔く死んでいった。あいつ曰く、『人は死ぬからこそ尊い命だ。産まれたからには、人は最期まで生きるのが神に与えられた使命』と言っていたよ」
確かに、人は時間と寿命には抗えない。時間を操れる能力を持っているが、何度も、何度も巻き戻しても、時間は迫ってくる

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