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第2話

死神の名を継ぐもの 1
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2019/05/07 15:10
 あるものには死を、あるものには恐怖を、あるものには憧れを…。そんなものを与える存在が死神である。だが、現実には死神など存在しない。存在を信じれば周りから笑われその人が恥ずかしい思いをすることになる。…しかし、それに近い存在ならこの世にいる。願わくば誰の前にでも現れるだろう、その人の前に死神は。


都内某所にある公園

ここに1人の少年がいた。名を桃木 透という。一見すればただの幼稚園児だが、彼にはとんでもない秘密がある。それは、とても高い知能を持ち合わせていることである。正確なIQは測ったことはないもののその知能は大学生レベルにまで行くという。周りの大人達は彼を"神童"と読んで尊敬の目を向けていた。しかし、子供達までが同じにはなれない…。彼はよく仲間外れにされ、イジメの対象にもなっていた。そんな彼の心を支えていたのが昔父親から教えて貰った死神という存在だった。彼はなれるものなら死神になってみたい…とそう願っていた。しかし、母親にこのような事実は言えない為に彼は友達と遊ぶという名目の元今日も1人公園でブランコに乗っていた…
桃木 透
なんでまいにちこんにゃことばかりなんだろう…
 幼稚園児らしく…なのか、言葉の使い方はあまり上手くはないようだ。周りの子供達の遊ぶ様子を見て今日も1人黄昏ている…。そんな所に犯罪の手はやってくる

(誘拐犯)僕、こんな所でどうしたのかな?迷子?
桃木 透
だれでしゅか?
(誘拐犯)僕はここの辺に住んでるお兄さんだよ。お母さんは?
 咄嗟に桃木は、これは誘拐犯だ…と思い、ここは話を合わせて後で捕まえてもらおう…という作戦を立ててあえてわからない振りをした。
桃木 透
おかあしゃんはおうちでしゅ
(誘拐犯)そうか、お家にいるのかァ。お兄さんがそこまで連れてってあげる
桃木 透
ほんと!?ありがとう!
 桃木は内心、下手過ぎると思いながら敢えて彼に連れられていく。大声で叫ぶチャンスを伺っていた時、人気のないトイレの裏でナイフを突き立てられた
桃木 透
いっ!?!?
(誘拐犯)…お前、俺が誰なのか分かってんだろ。近所だと有名な神童様だからな
桃木 透
あ…あ…
 桃木はカタカタ震えていた…。自分のこの行動は相手に逆手に取られてしまった。いくら頭が良くとも幼稚園児、ナイフを突き立てられたら冷静でいられるはずがない。大人でも冷静になれないものがいるのだから。

(誘拐犯)お前ん家も金がたんまりあるんだってなぁ?それを貰おうとするか。けけけ…
 桃木は願った。彼の1番信じる死神に助けを求め…願った。死神はその願いに答えた

(謎の女性)今どきそんな誘拐をするなんて、もっとマシな方法なかったんですか?

(誘拐犯)だ…誰だ!?

謎の女性は1歩…2歩と誘拐犯に近寄る。誘拐犯は背中に寒気を感じ、咄嗟に桃木を人質にした。

(誘拐犯)く…来るなぁ!このガキがどうなってもいいのか!!

(謎の女性)……面倒ごとは避けたかったんですがねぇ
 その時だった、誘拐犯は悲痛の声を上げて桃木を離して倒れてしまった。一体何が起きたというのか…そう桃木が思っていると、彼女の手に死神のような大鎌が握られているのを見つけた。そして桃木はこう言った…
桃木 透
おねぇしゃんは…だれでしゅか?
白城 佳奈
私ですか?…私は白城 佳奈。ただの大人ですよ。
そう言ってニコッ…と笑うと彼女は立ち去った。

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