前回!!
(前回のあらすじ)
絶望している2人の元へやってきたキラは、キラの母と話した内容を話した。
そして、さとりに絶対に救うと宣言しさとりを立ち直させる。
さとり side
__私は。
私は本当に、馬鹿だった。
こいしに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
私は何度言われたら分かるのだろう。
最初からそうだった。こいしの苦しんでいる姿が嫌で逃げた時から。
いつも、誰かに言われて改めたつもりだった。改心したと思ってた。
でも、違った。その証拠に私は今の今まで変われていなかった。
………誰かに言われるまで、ずっと。
今までならきっと、
"だけど、今からは違う"とか"絶対に救ってみせる"とか……
……偉そうに言っていたんでしょうね。
でも、もう分かった。
私には、そんな言葉を言っていい資格もそれ相応の覚悟もない。
そんなことを言っていいのは、キラやザキを含む………
私以外の皆だけ。
____だけど、それでもいつだってこいしを助けたい、
救いたいという気持ちだけは本当だった。紛れもない本心だった。
だから、私は今私にできることをする。
……それしか、今の私がこいしの為にしてあげられることはないから。
とにかく、私はこのことを早く皆に伝えないと。
2人は私にそう言葉を掛けてくれて、ザキはこくりと頷いた。
……やらなくちゃ。大好きな妹の為に。
私は病院の廊下に飛び出した。
紫霊 side
ルビーがナツキの元へ報告をしにここから飛び出して行ってから、どれくらい経ったのだろうか。
……相変わらず、目を覚さないままだな。
でも、時折少し苦しそうな表情を浮かべている時がある。
もしかしてだが、悪夢でも見てうなされてるのか……?
それか奇病の症状か………
心臓はまだ動いているし、弱いがなんとか自発呼吸もしている。
ただ、段々その動きも弱まってきているような気がする。
……もう恐らく時間がないんだ。
あいつらの様子を見に行きたい気持ちは山々だ。
だが、何が起こるか分からない。
もしかしたら病状が急変するかもしれない。
その場合、こいつの命に関わる。ただでさえ弱っているのに。
奇病は、他の病気とはちと違う。
この世の中には未だ発症する理由も対処法も治療法も何も分かっていない奇病が沢山ある。
そんな時、人数が多い方がいいだろ…
……それで救える命が、あるかもしれないなら。
その時、ガチャっと病室のドアが開いた。
俺が驚き、そう言うよりも先に早口で捲し立てられる。
だが、こいつがここに来たということはきっと___
この問題が一刻を争う事態ということもあり、俺は口をつぐむ。
全員で大図書館で治療法を探したが、中々見つからなかったこと。
薔薇病について書いてある恐らく唯一の本にも、「治療法はない」と記されていたこと。
キラが、キラの母から「奇病の発端を直すことをすればいいんじゃないか」ということを聞いたこと。
そして、それを大図書館にいなかった俺らに伝達しに来たこと。
___大体聞いて、理解した。
行った方向からして、恐らくは__
去り際にそう付け加えて、バタンとドアが閉まる。
……覚悟、したんだろうな。あいつは。
どいつもこいつも人の為に動けて凄いな。
俺なんかとは全然違う。
…俺は、再び聞いたことを元に思考を巡らす。
やっぱり治療法のない病気だったか……
まああれだけ探してもないのならそうなるのが自然だよな。
にしても、それを言ったのがキラの母親だってことが1番驚いた。
別に母親が言ったことに驚いたんじゃない。…キラが、あの母親を頼ったことだ。
……やっぱり、あいつは凄ぇよ。
事情はどうであれ、自分の心を傷つけた相手を頼れるなんて……
俺には到底できないな。
でも、

……いい親子関係が築けて。
もう無理して笑わなくて良くなって。
幸せに、なれて。
俺は無意識のうちに、そんな独り言を呟いていた。
その言葉が、すらすらと出てきた自分に驚いた。
一昔前の自分ならきっとそんなことなかっただろう。
……こんなことを思えるようになったのも、きっとキラ達のお陰だな。
全てが終わったら……誠心誠意感謝を伝えよう。
勿論、ここで言う終わりとはハッピーな方だ。
今までどれだけ俺が、いや…俺たちが、奇病のせいで苦しんできたと思ってんだ。
何度消えたいと願ったと思ってんだ。傷ついてきたと思ってんだ……
それでも乗り越えて、互いに手を伸ばして…繋がれた。
色々な人に救われた。それに、こんな俺でも誰かを救えたんだよ。
___バッドエンドになんて、させてたまるかよ。
ナツキ side
私はカルテを急いで片付けていた。
皆が大図書館へと行っている時、カルテになら何か記されているんじゃないかと思ったから。
例えば、過去に薔薇病を発症した人の発症の原因が分かれば、
倒れたやつを助ける手がかりになるかもしれない。
それと同じでそこから対処法や治療法を特定できるかもしれないと思った。
だが、現実は違う。
奇病自体珍しい病気ということもあってか、そもそもカルテの数が少ない。
___過去に「薔薇病」を発症した患者は1人もいなかった。
ただ、もしかしたら今頃大図書館を調べにいっているやつらが何か治療法を見つけているかもしれない。
……あの図書館は凄く広いからな。
全員でくまなく探せば、一つくらい記述された本があると信じたい。
私も後で様子を伺いに行くとするか。
その前に、一旦こいしの様子を見に行こう。
ルビーにも後で向かうと言ったしな。
私はカルテをしまい込むと、急いで廊下に出た。
私が右に曲がると、奥の方で誰かが話しているのが分かった。
非常事態だからあまり廊下に出ているやつはいないはずだが……
私はそっちに向かって歩いていく。
近づいて分かった。
あれはルビーと……さとり、倒れたこいしの姉だ。
何かを話している様子だ。
でも、さとりはともかくルビーはどうしてここにいるんだ?
先に病室に帰ったものかと思っていたが……
2人とも真剣に話していて、こちらに気がつく様子がなかった。
私は後ろから距離を縮める。
何かを話していることは一目瞭然なのだが、
肝心の何を話しているのかが全然聞き取れなかった。
もう少し近づくと、ようやく声がクリアに聞こえてきた。
…聞き間違いじゃない、よな……!?!?
今、確かに「治療法はない」と聞こえた。
…恐らく、口ぶりからして薔薇病のことだ。
それなら、薔薇病は治らないのか………、?
このまま、弱っていくのを見ているだけなのか……
そんなのは…あんまりだ………
ルビーとさとりはほぼ同じタイミングで振り返った。
……しまった、あまりの衝撃で声が…
これじゃ勝手に聞き耳立ててたやつになっちまう。
さとりは、何かを呟いていた。
そういえばあいつ、こころを読む能力?を持ってるんだったな……
……って、今はそれどころじゃない。
ルビーもまだ、詳しく知らない様子だった。
でも、よくよく考えるとそれならおかしい。
自分の大切な妹の奇病の治療法がないと知って絶望したはずなのに、
なぜ今のこいつはこんなに…、希望で満ち溢れている?
………私がさとりの立場なら、絶望し続けてることだろう。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。