前回!!
(前回のあらすじ)
私が絶叫しました!!!……じゃなくて、
キラの母にキラが相談したところ、「奇病の発端を治すようなことをしたら」というアドバイスをもらった。
ザキは妖夢に声をかけて皆を落ち着かせようと試みる。
その後ザキは様子のおかしいさとりを見つけ、疑問に思いながらさとりが開いている本を覗き込むと、
"治療法はない"の文字が視界に映り____
ザキ side
俺は悩みに悩んでいた。
勿論悩んでいる内容は"治療法がないことを皆に伝えるか否か"だ。
伝えた方が良いことくらい、本当は分かっている。
でも、もしこの事実を伝えたら?
____皆絶望してしまうかもしれない。
皆絶望し、深く悲しみ、もう二度と希望を持てないかもしれない。
最悪の場合自暴自棄になり古明地妹の命を諦め手放すものだって_____
俺の判断でそうなったら、悔やんでも悔やみきれない。
伝えなければ皆治療法があるかもしれないという希望を抱き懸命に探し続けることだろう。
でも治療法法も対処法も何もかもが見つからない時間を過ごすだけだ。ただの時間の無駄になるだけだ。
今俺が悩んでいるこの時間にも、薔薇病は進行していることだろう。
今この瞬間も、古明地妹は衰弱していっている。
________もう時間は少ししか残されていないんだ。
でも俺が伝えようと思ったところで何ができる?
キラ以外には声を届けることができない俺が。
俺は現状、キラ以外とは筆談するしか意思の疎通ができない。
大きな物音を立てて自分に注目させる?
……できるわけない。
仮に物音を立てたって「誰かが本を落としただけ」「誰かが本棚を少し倒してしまっただけ」となるに違いない。
そもそもどこから音がなったかも誰もわからないはずだ。
俺が1人口を動かしても誰も聞き取ろうとはしない。というより聞き取れない。
分かっていたことだ。皆必死に本を読み漁り集中しているのだから。
さっきまで普段はそんなことしない奴でも本を散らかし、本を放り投げていたんだ。
俺に注目する奴など誰1人いない。分かっていたことだ。
____自分がもどかしくてもどかしくて仕方がなかった。
どうするのが俺にとっての"正解"で、
どうするのが皆にとっての"正解"で、
どうするのが古明地妹にとっての"正解"なのか。
考えても考えても答えには辿りつかない。
これ以上俺は、どうしたら____________
____俺はいつもこうだ。
結局土壇場で周りの奴らに助けられている。
………本当に情けないな、俺は。
さとり side
…………書いてある内容が、うまく理解できない。
いや、理解はしているけれど必死に脳が理解することを拒んでいる。
嘘だ。絶対に嘘だ。"治療法がない"わけない。
きっと私は悪夢を見ている。現実じゃなくて……これはきっと悪い夢。
本当は、治療法が沢山あって、こいしは元気になって………ッ
そう、だよね________?
( パラッ____
ページをめくる。同じページを何度も何度も。
1番上からじっくりと読み直す。
病気の説明、発症する原因、病気の進行________
そして1番最後、治療法のページ。やはり何度読み直しても変わらない。
"治療法はない"という大きな文字が目に入る。
……何度同じページを読み直してもめくっても、
この本に書かれている内容が、治療法について記載されている文章が変わるわけがない。
童話なんかに出てくる魔法の本じゃないのだから。
そんなの、当たり前のことだ。
でも、どうしても………………

信じられない。
気がついたら隣に誰かが立って、同じように立ち尽くしていた。
きっと私の異変に気がついて様子を見にきてくれたんだと思う。
そして同じ"治療法がない"の文字を見て……同じように立ち尽くしている。
でも私には、それが誰なのかを確認する気力もなかった。
どこからか聞き覚えのある声がした。
この声は………キラ。そして、私のすぐ後ろからはザキの声。
ということは、多分ザキもあの"治療法はない"の文字を____
…………ッ
変わってあげられるなら……お姉ちゃんが変わってあげたい。
たとえこの命が尽きようとも、こいしの命を守れるなら………
キラ side
ザキに「治療法の手がかりを見つけたかもしれない」と言いかけて異変に気がついた。
なんでザキは俺を見てそんなに弱々しく笑うんだ?
なんでザキはそんな絶望したような表情なんだ?
____ザキだけじゃない。それは隣にいるさとりまで。
俺はただならぬ事態が起こったことを察した。
でも、それならなんでこいつら2人だけが?
謎は深まるばかりだけど今はそんなことを考えている場合じゃない。
俺はすぐに2人の方へ駆け寄った。
よく見るとさとりは本を開いたまま固まっている。
ザキもそのページに書かれた内容を一語一句確認するかのように読んでいる。
もしかして本に何か____?
そう思った俺は、ザキ達が呆然としながら見ている文章に目を向ける。
俺もそこで異変に気づいた。
ついでに2人が呆然と立ち尽くしている理由も、2人が絶望の表情をしている理由も。
あわよくば気づきたくなかった。気づかされたくなかった。
俺はさっきまで自分が言おうとしていたことを全て忘れる程絶望した。
俺の目に映ったのは"治療法はない"と大きく書かれた文字。
何度見直してもその文字は変わらない。変わるわけがない。
…………そりゃあ、絶望するわけだ。2人とも立ち尽くすわけだ。
俺はそう納得した。
…でも、いつまでも絶望しているわけにはいかない。
俺はそう思い直した。いつものように感情に全てを任せたら絶対に駄目だ。
俺は、俺たちはこいしを本当の意味で救いたいんだ。
だから、俺も治療法がないという事実に絶望して心が折れてしまいそうだけど。
それでも________
俺が少し話すだけで、何を言おうとしているのか分かっちまうなんて……
俺の相棒は超能力者なのか?と、いつもなら言っていることだろう。
でもこんな状況でそんなツッコミを入れられるわけがない。
俺はバカだけど、それくらい流石にわかる。
他のやつらが絶望せず未だ本を探しているのはこの事実をまだ知らないからだ。
そしてこの状況、恐らく…………
急に口を開き、何を言い出すかと思えばそれは自虐だった。
そんなことない。ザキは自分は何もできないというが、俺にとって大切な相棒だ。
何もできないどころか沢山色々なものをもらっている。
それにそれは、俺だけじゃなく皆も同じだ。
あまる言いたくないが、ザキがいないと最悪誰かが死んでいたシチュエーションだってあったかもしれない。
だからこそ慌ててそれを否定しようとする俺に、ザキは続ける。
そう否定しながら、一体俺はザキが何を切り出してくるのか不思議でたまらなかった。
今は一刻を争う状況だ。余計なことを切り出したり話したりしている時間はない。
ザキは頭がいいから、もしかしたら何か治療法を____?
いや、でも治療法はないって書いてあって実際ザキも絶望していたしそんな訳……
今度は……………?













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。