第29話

仲間
691
2023/03/25 09:00
どうやら、今日の到着は私たちの方が早かったようだ。
といっても、バディさんやスタッフさんたちは準備を始めている。
シルク
おはようございます!
あなた
お願いします。
挨拶をしながらスタジオ入りすると、方々から挨拶が返ってくる。
バディ
2人とも、おはようございます。
…ふむ。
一緒にいらっしゃったのですか?
バディさんの一言に、ギクッとする。
シルク
いやーさっきそこで会いましたー。
シルクは悪びれることなく、サラリと嘘をつく。
でも、どうやらバレてる前提での嘘のようだ。
バディ
ま、そういうことにしておきましょう。
バディさんは、クスリと笑って、今日の撮影の流れを説明してくれた。
バディ
では、2人とも衣装替えとメイクをお願いします。
どうやら、今日はソロでの撮影はないらしい。
私とシルクでワンカット撮ったあとは、全員での撮影となる予定だ。

今日のテーマは「爽やかさと柔らかさ」。
衣装もメイクもガラリと変わる予定だ。
あなた
今日もお願いします。
スタイリスト
こちらこそ、よろしく。
メイク
よろしくね〜♪
今朝は、既に下着を身につけてきた。
服を脱ぎ、スタイリストさんの元へ行く。
そして、今日の衣装に目を奪われた。
あなた
うわ…可愛い…
春をイメージしたような衣装。
桜の花びらを散らしたような、フワフワの衣装。

普段の私なら、絶対に着ないタイプの服だ。
スタイリスト
イメージは、桜の精。
髪型もふわっふわに仕上げる予定。
あなた
……似合いますかね?
メイク
それは私たちの仕事♪
だけど、全く問題ないわw
だって、あなたさん可愛いものw
あまり言われ慣れていない言葉に、思わず赤面する。
あなた
あ、ありがとうございます…///
メイク
あら…。
2人が、一瞬動きを止めた。
どうしたのかと思ったが、すぐにいつも通りの態度に戻ったため、気のせいということにする。

この時、
(シルクくんと、進展あったみたいw)
と思われているなんて、想像もしなかった。

そして、着々と準備が進められた。

自分が変わっていく姿を見ると、自然と背筋も伸びる。
スタイリスト
よし!いいよ。
メイク
メイクもオッケー♪
あなた
ありがとうございました。
行ってきます!
スタジオに戻ると、メンバーたちも着替えを終えたようだ。
全員そろっている。

初めに気づいてくれたのはシルク。
シルク
すっげ!
可愛いw
ンダホ
ほんとだー!
昨日と同じ人とは思えない!
マサイ
少女みたいだな!
ダーマ
マサイのそれ、褒め言葉?
ダーマのツッコミに、笑いが起きる。
全員の準備が整ったところで、カメラマンからの指示が出た。

2日目の、撮影開始だ。
カメラマン
まずは、シルクとあなたさん!
入ってー。
シルク
はい。
あなた
はい!
バディさんと一緒に立ち位置の確認をする。
私は、桜の枝を持ち、シルクへ手渡す仕草をするようだ。
カメラマン
昨日の、シルクのウィークネスの続きってイメージだ。
桜の精によって、世界は暖かさを思い出す。それと同時に、シルクも心を開いていく…そんな感じ。
あなた
分かりました。
私とシルクが立ち位置に着くと、大型の扇風機にスイッチが入れられる。
それと共に、桜の花びらが舞い上がった。

花びらが舞い散る中、伏せていた目線を上げる。
シルクと視線が交差した。
桜の枝で口元を隠し、柔らかく微笑む。

それは、完全に、恋人に向けた笑顔。
シルクが愛しくて愛しくて堪らないといった表情だった。
シルク
………っ!
シルクが息を呑む。
恐らく、仕事で、ここまで感情を露わにするとは思っていなかったんだろう。

だって、仕方ない。
シルクに、こんな顔をさせるためには、これが一番手っ取り早いと思ったから。
ンダホ
………あのさ。
ダーマ
…うん。だよね。
モトキ
あ、やっぱり?
みんな同じこと思ってる気がする。
ザカオ
俺も思った……。
マサイ
え、何々!?
私たちの雰囲気が、明らかに昨日と違うことを、どうやらメンバーは勘づいたようだった。
…マサイには、後で伝えよう。
あなた
シルク。
シルク
…え?あ…。
少し、おどけた表情をしてみせる。
そして、スッと、桜の枝を手渡した。
シルク
………。
その枝をシルクは受け取り、愛おしそうに見つめてから、そっと桜にキスをした。

…やられた。
カメラマン
カット!!
オッケー!!
その合図に、救われた。
シルク
ちょwあなたー?
顔、真っ赤なんですけど?
ニヤニヤしながら、シルクが顔を覗き込む。
あなた
ぅっさい!
先ほどの仕返しだと、シルクは楽しそうに笑った。
そこへ、メンバーたちがやってくる。
モトキ
えーと、あのーお2人さん??
ダーマ
俺たちに、何か言うことはありませんかー?
ンダホ
というかさー!
まさか、シルク、昨日のラインの通りになったんじゃ…っ送りオオカ…
シルク
なってねーよ!!
シルクがンダホの口を押さえるが、しっかり聞こえてしまった。

タクシーを待つ間に届いたメッセージは、それだったのだ。
なるほど。
だから、シルクは余計に怒ったのかもしれない。

心の中で、シルクに謝った。
ザカオ
でも?だよな?
シルク
………そうだよ。
お前らの考えてる通り。
無事、あなたと恋人になれました!!
マサイ
えーーーーーー??!!!
モトキ
いや、まだ分かってなかったの?!
マサイの天然っぷりに救われる。
みんな、シルクの13年?にも及ぶ片想いを知っていたため、自分のことのように喜んでくれた。

ンダホなんて、嬉しくて目に涙を溜めている。

本当に、素敵な人たち。
思いやりに溢れていて。
仲間を心から大切にして。

うん。
Fischer’sも、私にとって、永遠の推しだ。
カメラマン
はーい!カット!
突然、カメラマンの声がかかる。
シルク
え?カット?
カメラマン
いやー良い絵が撮れたぜ。
全員での撮影を予定していたが、お前らは自然体が一番。
だから、今のやり取りの中の一コマを切り取らせてもらった。
最高の写真だ!と、太鼓判を押してもらえて、みんな嬉しそうだ。

最後に、全員並んで記念撮影をし、全ての撮影が終了した。




この写真集が、社会現象となるのは、もう半年ほど先の話。

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