第4話

花螳螂
1,416
2020/08/29 23:13
(なまえ)
あなた
ーーえ?セレモニーイベント?
俺は突然真からかかってきた電話に驚きを隠せなかった。






花宮真
花宮真
『あぁ。なんか成り行きで、特例だが参加できることになった』
(なまえ)
あなた
へぇ~っ!凄いじゃないか、まーくん!
それで、そのイベントはいつ?
花宮真
花宮真
『明日の昼。で、悪ィんだけど、俺のバスケのユニフォームこっちに持って来てくれねぇか。どうも泊まり込みになりそうだから。』
(なまえ)
あなた
わかった!持っていくよ。
他に必要な物はない?
花宮真
花宮真
『とりあえず大丈夫だ。
何かあったらまた連絡する。』
(なまえ)
あなた
そっか。じゃあ今から持っていくよ。
着いたら連絡するから少し待ってて。
花宮真
花宮真
『あぁ。わかった。』


ーーーピッ!
スマホの通話を切ると、俺は準備のために真の部屋へ向かった。


◆◇◆◇◆◇
(なまえ)
あなた
まーくんっ!
花宮真
花宮真
!兄貴。
施設のエントランスで待っていた真に声をかける。
(なまえ)
あなた
ごめんね、待った?
花宮真
花宮真
いや、ンな待ってねぇよ。
俺こそ急に悪かった。
(なまえ)
あなた
ううん、大丈夫だよ。
それより、こんな大きな施設のセレモニーイベントに参加するなんて流石だね。
花宮真
花宮真
ふはっ!まぁな。
得意げに笑った真を見て、つい俺も誇らしくなって、よしよしと真を撫でていた時だった。
紫原敦
紫原敦
ーーーあなた?
背後から懐かしい声が聞こえてきた。
振り向けば呆然とこちらを見ている敦くん、青峰くん、黒子くん、黄瀬くん、緑間くん、征十郎くん…バスケ界で『キセキの世代』と呼ばれるかつての後輩たちがいた。
紫原敦
紫原敦
っ、あなた~っ!
感極まったのか敦くんが突進してきて俺はかろうじてそれを受け止めた。

背が高くて助かった。
今はおそらく2m以上ある敦くんに飛び付かれたら流石に危ない。
紫原敦
紫原敦
あなたっ、あなただぁ~っ!
(なまえ)
あなた
久しぶりだね敦くん。
あれから随分と身長伸びたんだね。
中学時代の後輩たちに直接会うのは実に久しぶりだ。俺はバスケ部じゃないし、霧崎に入学してからは新しい友人や後輩が出来て、彼らと会うことはなかったから。
黒子テツヤ
黒子テツヤ
お久しぶりです、あなた先輩。
(なまえ)
あなた
久しぶり、黒子くん。
黒子くんたちもバスケで?
黒子テツヤ
黒子テツヤ
はい。(…?)
黄瀬涼太
黄瀬涼太
あなたっち~、寂しかったッスよ~!
卒業してから全然会えなかったッスもん!
(なまえ)
あなた
ごめんね、黄瀬くん。
青峰大輝
青峰大輝
おい、黄瀬ばっか構うんじゃねぇ。
(なまえ)
あなた
ふふっ、青峰くんも相変わらずだね。
緑間真太郎
緑間真太郎
今日の蟹座は〝思わぬ人との再会〟とあったが、やはり当たっていたのだよ。
(なまえ)
あなた
緑間くんも相変わらず占い大好きなんだね。
赤司征十郎
赤司征十郎
先輩、お久しぶりです。
また一緒にチェスがしたいです。
(なまえ)
あなた
うん。
俺もまた征十郎くんとやりたいな。
6人に囲まれて、俺の周りは一気に騒がしくなった。みんな変わってないなぁ。
花宮真
花宮真
おい…テメェら……。
思わぬ再会に浸っていると、背後から地を這うような声が聞こえてきた。
黒子テツヤ
黒子テツヤ
!花宮さん………。
緑間真太郎
緑間真太郎
何故貴様がここにいるのだよ。
花宮真
花宮真
あァ″……!?
眉間に皺を寄せて黒子くんと緑間くんを睨みつける真。
(なまえ)
あなた
まーくん、そんな顔しちゃだめだよ。
緑間真太郎
緑間真太郎
まー、くん…?
黒子テツヤ
黒子テツヤ
あの……あなた先輩、彼と一体
どういうご関係ですか…?
(なまえ)
あなた
ん?まーくんは俺の弟だよ。
黒子テツヤ
黒子テツヤ
!?
緑間真太郎
緑間真太郎
何…!?
黄瀬涼太
黄瀬涼太
ま、マジッスか…!?
俺の言葉を聞いた途端何故か固まってしまう3人。
青峰大輝
青峰大輝
へぇ~。アンタ、あなたさんの弟
だったのか。
紫原敦
紫原敦
い~な~。俺もあなたみたいな
兄ちゃんが良かったし~。
赤司征十郎
赤司征十郎
そういえば先輩の名字も〝花宮〟
だったな。
一方、青峰くん、敦くん、征十郎くんはマイペースに返してくれた。
黒子テツヤ
黒子テツヤ
………本当なんですか?
(なまえ)
あなた
ん?
黒子テツヤ
黒子テツヤ
先輩が花宮さんのお兄さんだって…。
(なまえ)
あなた
本当だよ。
にっこり微笑んで頷く。
黒子テツヤ
黒子テツヤ
……………先輩はっ、この人がバスケで何をしているかご存じなんですか!?
緑間真太郎
緑間真太郎
おい、黒子っ!
(なまえ)
あなた
いいよ、緑間くん。
黒子くんの疑問は最もだから。
俺は表情を崩さず言う。
(なまえ)
あなた
知ってるよ。
まーくんがバスケで必要以上に激しい
プレーをしてること。
黒子テツヤ
黒子テツヤ
(なまえ)
あなた
でも、俺はバスケはしてないし。
弟と赤の他人なら、俺は弟をとるよ。
家族だから。
生まれたときからずっと一緒だったから。

だから俺は真を守る。
『あの時』はーーちゃんと守ってあげられなかったから。
(なまえ)
あなた
ごめんね、黒子くん。
さ、そろそろ行こっか。まーくん。
花宮真
花宮真
あぁ。じゃあな、『キセキの世代』。


◆◇◆◇◆◇
花宮真
花宮真
っ、ふはっ!
黒子アイツのあの顔…ケッサクだな。
(なまえ)
あなた
まーくんが嬉しいなら俺も嬉しいよ。
施設の廊下を2人で歩いていると、
今吉翔一
今吉翔一
自分ら随分とえげつないこと
するなァ。
曲がり角の影から現れたのは切れ長の目が特徴的な高校生。
(なまえ)
あなた
君は…?
花宮真
花宮真
………あなた、あの人には関わらない方がいい。
(なまえ)
あなた
えっ?
今吉翔一
今吉翔一
酷い言いようやな~。
中学時代の先輩に対して。
中学の先輩?
今吉翔一
今吉翔一
おん。ワシ、今吉翔一っちゅーんや。
中学ンときは弟クンとそれなりに親しくさせてもろうてたんやで。
(なまえ)
あなた
へぇ、そうなんだ。
ってことは俺と同い年?
今吉翔一
今吉翔一
せやな。よろしゅう。
花宮真
花宮真
………チッ。
さっきから真の様子が変だ。
また俺のこと名前呼びしてるし。
(なまえ)
あなた
それで…俺たちに何の用かな?
さっきの言葉から察するに、見てたんだよね。俺と黒子くんとのやり取り。
俺は真を庇うように一歩前へ踏み出して今吉くんに尋ねた。
今吉翔一
今吉翔一
そんな怖い顔せんといてぇや。
ちょっと声かけただけやんか。
(なまえ)
あなた
酷いなぁ、怖い顔だなんて。
別に怒ってるわけじゃないのに。
お互いに淡々とした会話が続く。
今吉翔一
今吉翔一
自分、充分怖いで。
まるで花螳螂はなかまきりや。
(なまえ)
あなた
花螳螂?
今吉翔一
今吉翔一
おん。知っとる?花螳螂は幼虫のときは花に紛れて獲物を狙うんやなく、花に成りきった上で、獲物に仲間やと錯覚させて補食するんやて。
今吉翔一
今吉翔一
よう似とるやろ。
綺麗な顔して無害な人間に成りきって、黒子クンたちの先輩として仲間やと錯覚させた上で切り捨てたさっきのキミと。
そうなのかな?
自分ではそんなつもりはないんだけど。
今吉翔一
今吉翔一
自覚なしかい。
こら、花宮よりタチ悪いわ。
(なまえ)
あなた
まぁ、俺も人間だからね。清廉潔白とはいかないよ。周囲のイメージなんてその人の見せ方次第だし。
今吉翔一
今吉翔一
はははっ、そらそうや。ワシもこの世に善人なんておらんと思うとるしな。
いやー、やっぱり花宮の兄貴やなぁ。
ワシ、キミのこと気に入ったわ!
今吉くんは心底楽しそうに笑って頷く。
(なまえ)
あなた
うん。俺も、キミみたいなタイプは興味深いかな。好きにはなれないけれど。
今吉翔一
今吉翔一
えー、つれへんなぁ。ま、ええわ。
ぼちぼち仲良うしてこうや。
そう言い残して俺たちの横を通り過ぎていった。
花宮真
花宮真
あなた…。
(なまえ)
あなた
大丈夫だよ。
ああいうタイプはこちらから仕掛けない限りは傍観者に徹するから。
真を安心させるように手をとって歩き出す。
確かに真はああいう、いつ敵にまわるか知れないタイプは苦手だろうけど…。
(なまえ)
あなた
物語は起承転結。どう転ぶかわからないからこそ楽しいし…ね。
花宮真
花宮真
?何か言ったか。
(なまえ)
あなた
ううん。
セレモニーイベント、応援に行くね。


俺はそう言いながら、真に微笑んだ。



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