俺は突然真からかかってきた電話に驚きを隠せなかった。
ーーーピッ!
スマホの通話を切ると、俺は準備のために真の部屋へ向かった。
◆◇◆◇◆◇
施設のエントランスで待っていた真に声をかける。
得意げに笑った真を見て、つい俺も誇らしくなって、よしよしと真を撫でていた時だった。
背後から懐かしい声が聞こえてきた。
振り向けば呆然とこちらを見ている敦くん、青峰くん、黒子くん、黄瀬くん、緑間くん、征十郎くん…バスケ界で『キセキの世代』と呼ばれるかつての後輩たちがいた。
感極まったのか敦くんが突進してきて俺はかろうじてそれを受け止めた。
背が高くて助かった。
今はおそらく2m以上ある敦くんに飛び付かれたら流石に危ない。
中学時代の後輩たちに直接会うのは実に久しぶりだ。俺はバスケ部じゃないし、霧崎に入学してからは新しい友人や後輩が出来て、彼らと会うことはなかったから。
6人に囲まれて、俺の周りは一気に騒がしくなった。みんな変わってないなぁ。
思わぬ再会に浸っていると、背後から地を這うような声が聞こえてきた。
眉間に皺を寄せて黒子くんと緑間くんを睨みつける真。
俺の言葉を聞いた途端何故か固まってしまう3人。
一方、青峰くん、敦くん、征十郎くんはマイペースに返してくれた。
にっこり微笑んで頷く。
俺は表情を崩さず言う。
家族だから。
生まれたときからずっと一緒だったから。
だから俺は真を守る。
『あの時』はーーちゃんと守ってあげられなかったから。
◆◇◆◇◆◇
施設の廊下を2人で歩いていると、
曲がり角の影から現れたのは切れ長の目が特徴的な高校生。
中学の先輩?
さっきから真の様子が変だ。
また俺のこと名前呼びしてるし。
俺は真を庇うように一歩前へ踏み出して今吉くんに尋ねた。
お互いに淡々とした会話が続く。
そうなのかな?
自分ではそんなつもりはないんだけど。
今吉くんは心底楽しそうに笑って頷く。
そう言い残して俺たちの横を通り過ぎていった。
真を安心させるように手をとって歩き出す。
確かに真はああいう、いつ敵にまわるか知れないタイプは苦手だろうけど…。
俺はそう言いながら、真に微笑んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。